「BCAAとEAAって、どっちもアミノ酸でしょ?結局、何が違うの?」
「筋肥大にはEAAの方がいいって聞いたけど、じゃあBCAAはもう飲む意味ないってこと?」
「プロテイン飲んでれば、BCAAもEAAも別にいらないんじゃないの?サプリ代もバカにならないし…」
プロテイン、クレアチンと並び、筋トレサプリメントの定番として名前が挙がる「BCAA」と「EAA」。
どちらも筋肉にとって重要な「アミノ酸」であることは知っていても、その明確な違いや効果の差、そしてプロテインとの関係性を正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
特に近年、「BCAAは効果がない?」「EAAこそ最強!」といった情報が飛び交い、多くのトレーニーが混乱しています。
「結局、自分は何を、いつ飲めばいいのか?」——その答えが分からず、なんとなく両方飲んでみたり、あるいは何も飲まなかったり…。
この記事では、そんなBCAAとEAAに関するあらゆる疑問と誤解を解消します。
アミノ酸の基本から説き起こし、BCAAとEAAの決定的な違い、最新の研究に基づいた筋肥大効果の比較、そしてプロテインを飲んでいる場合の必要性、効果的な飲み方まで、科学的根拠(エビデンス)に基づいて徹底的に解説します。
この記事でわかること
- タンパク質・アミノ酸・BCAA・EAAの関係性がゼロからわかる
- BCAAとEAAの決定的な違いと、筋肥大効果に関する最新の研究結果
- プロテインを飲んでいる場合の必要性や、効果的な摂取タイミング・選び方
まず知っておきたい「アミノ酸」の基本

BCAAとEAAの違いを理解するには、まず「アミノ酸とは何か?」を知る必要があります。
① タンパク質とアミノ酸の関係(ビルディングブロック)
私たちの筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などは、主に「タンパク質」から作られています。
そして、そのタンパク質を構成している最小単位が「アミノ酸」です。
アミノ酸は、タンパク質という「建物」を作るための「レンガ(ビルディングブロック)」のようなものだとイメージしてください。
アミノ酸は全部で20種類存在します。
② 「必須アミノ酸(EAA)」と「非必須アミノ酸」
この20種類のアミノ酸は、体内で合成できるかできないかによって、2つのグループに分けられます。
・必須アミノ酸 (EAA – Essential Amino Acids):9種類
体内で合成することができない(あるいは、できても必要量に満たない)ため、食事やサプリメントから必ず摂取しなければならないアミノ酸。
・非必須アミノ酸:11種類
体内で他のアミノ酸や物質から合成することができるアミノ酸。
筋肉を作るためには、これらのアミノ酸がバランス良く揃っている必要があります。
EAA(Essential Amino Acids)とは?9種の生命維持アミノ酸

EAAとは、前述の通り「必須アミノ酸」9種類すべての総称です。
EAAの具体的な種類とその役割
EAAには以下の9種類があります。
バリン、ロイシン、イソロイシン(※これら3つがBCAA)、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン。
これらは、筋肉の合成・修復はもちろん、ホルモンや酵素、神経伝達物質の生成など、生命維持に不可欠な様々な役割を担っています。
なぜ「必須」なのか?体内で合成できない重要性
もし、これら9種類のEAAのうち、どれか1つでも不足すると、体は新しいタンパク質(筋肉など)を効率よく合成することができなくなってしまいます。
(「桶の理論」に例えられます)
だからこそ、「必須」アミノ酸と呼ばれ、食事からの摂取が極めて重要なのです。
BCAA(Branched-Chain Amino Acids)とは?筋肉に重要な3種のEAA

BCAAとは、「分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸」の略称です。
これは、EAA(必須アミノ酸)9種類のうち、特定の3種類のアミノ酸だけを指す言葉です。
BCAAの具体的な種類(ロイシン、イソロイシン、バリン)
BCAAに含まれるのは、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類。
これらは、筋肉のタンパク質中に特に多く含まれており、運動時のエネルギー源としても利用されるなど、筋肉にとって非常に重要な役割を持つことから、注目されてきました。
特に「ロイシン」が筋合成のスイッチ(mTOR活性化)として注目された
BCAAの中でも、特に「ロイシン」は、筋肉の合成(筋タンパク質合成)を開始させるための重要な「スイッチ」(mTORというシグナル伝達経路を活性化する)としての役割を持つことが研究で示唆され、BCAAサプリメントの人気を高める大きな要因となりました。
【核心】BCAAとEAAの「決定的」な違い

ここまでの説明で、もうお分かりですね。
BCAAとEAAの違いは、その「構成成分」にあります。
① 構成成分の違い:「EAAの中にBCAAが含まれる」
EAA = 必須アミノ酸「全9種類」のセット。
BCAA = EAAのうちの「特定の3種類」(ロイシン、イソロイシン、バリン)だけを抜き出したもの。
つまり、EAAサプリメントには、BCAAも必ず含まれています。
BCAAは、EAAの一部なのです。
② BCAAだけでは「材料不足」?筋合成におけるEAAの重要性
筋肉を効率よく合成するためには、前述の通り、9種類全てのEAAがバランス良く揃っている必要があります。
BCAA(3種類)だけを摂取しても、他のEAA(残り6種類)が不足していれば、筋肉という「建物」を作るための「レンガ(材料)」が足りない状態となり、筋合成はスムーズに進みません。
「スイッチ」役のロイシン(BCAA)はあっても、他の材料がなければ意味がない、という考え方です。
筋肥大効果はどっちが高い?最新研究が示す「EAA優位説」

この「材料不足」の問題が、近年の「EAA優位説」や「BCAAは意味ない?」論争に繋がっています。
BCAA単体での筋合成効果は限定的?
いくつかの研究では、トレーニング後にBCAAだけを摂取しても、筋タンパク質合成の応答は短時間で頭打ちになり、EAA(またはホエイプロテイン)を摂取した場合と比較して、その効果は限定的である可能性が示唆されています。
「スイッチ」は入るものの、材料不足で合成が続かない、という解釈です。
なぜ「9種類全て」のEAAが揃うことが重要なのか?
筋肉を作るためには、必須アミノ酸9種類全てが必要です。
EAAサプリメントは、その9種類全てをバランス良く供給できるため、BCAA単体よりも、筋タンパク質合成をより強力に、かつ持続的に高めることができると考えられています。
これが、「筋肥大」という目的においては、EAAの方がBCAAよりも優れているとされる主な理由です。
「BCAAはもう古い?」「飲む意味ない?」という意見に対する見解
では、BCAAは全く意味がないのでしょうか?
必ずしもそうとは言い切れません。
後述するように、BCAAには「筋肉分解の抑制」や「疲労軽減」といった効果も期待されています。
また、EAAに比べて安価であるというメリットもあります。
ただし、「筋肥大」を最優先に考えるのであれば、現在の科学的知見からは、BCAAよりもEAAを選ぶ方が合理的と言えるでしょう。
BCAA信者だった僕がEAAに乗り換えた理由
僕は、トレーニングを始めた頃から「トレ中はBCAA!」と信じ込み、毎日欠かさず飲んでいました。
なんとなく「筋肉が分解されていない気がする」という感覚はありました。
しかし、ある時ジムの先輩から「筋肥大目的なら、今はEAAの方が主流だよ。
BCAAだけじゃ材料足りないからね」と教わりました。
「え、そうなの?」。
僕は慌ててネットで調べ、EAAが9種類の必須アミノ酸全てを含んでいること、BCAAだけでは筋合成に限界がある可能性があることを知りました。
「もしかして、今までBCAAにかけたお金、無駄だった…?」。
少しショックでしたが、僕はすぐにEAAサプリメントを注文。
トレ中に飲むものをBCAAからEAAに変えてみました。
正直、プラシーボかもしれませんが、EAAを飲み始めてからの方が、トレーニング後の筋肉の張り(パンプ感)や、翌日の回復感が良いように感じています。
「スイッチ」だけでなく、「材料」も届けているという安心感。
僕にとって、EAAへの乗り換えは正解でした。
じゃあ、プロテイン(ホエイ)を飲んでいればEAA/BCAAは不要?

「EAAが大事なのは分かった。
でも、プロテインにもEAAは含まれてるんでしょ?」
その通りです。
特にホエイプロテインは、EAAを豊富に、かつバランス良く含んでいます。
ホエイプロテインは「完璧なEAA供給源」である
高品質なホエイプロテインは、必須アミノ酸9種類全てを十分に含んでおり、それ自体が「完璧なEAA供給源」と言えます。
したがって、トレーニング前後や間食で、十分な量のホエイプロテインを摂取できているのであれば、追加でEAAやBCAAをサプリメントとして摂取する「必須性」は低い、というのが現在の一般的な見解です。
それでもEAA/BCAAを単体で摂るメリットは?(吸収速度、トレ中補給)
では、EAA/BCAAサプリメントは全く不要なのでしょうか?
状況によっては、単体で摂るメリットも存在します。
① 吸収速度:アミノ酸は、タンパク質が分解された最終形態。
そのため、EAA/BCAAサプリメントは、ホエイプロテインよりも消化吸収が速く、より迅速に血中アミノ酸濃度を高めることができます。
トレーニング直前や、特にトレーニング「中」の栄養補給(イントラワークアウト)には、消化の負担が少ないアミノ酸が適していると考えられます。
② カロリーコントロール:減量中で、プロテインのカロリー(糖質や脂質も微量に含まれる)すら抑えたい場合、ほぼゼロカロリーのアミノ酸サプリメントは有効な選択肢となります。
③ 利便性:トレーニング中にプロテインシェイクを飲むのはお腹が張る、という人でも、水に溶かしたEAA/BCAAならサラッと飲めます。
EAA/BCAAに期待できる「その他の効果」

筋肥大以外にも、EAA/BCAAには以下のような効果が期待されています。
① トレーニング中の筋肉分解(カタボリック)抑制
トレーニング中は、エネルギー不足などから筋肉が分解されやすい(カタボリック)状態にあります。
血中にアミノ酸(特にBCAA)を供給しておくことで、筋肉の分解を抑制する効果が期待できます。
(ただし、十分な栄養が摂れていれば、その効果は限定的という意見もあります)
② 運動時のエネルギー源としての利用
BCAAは、筋肉で直接エネルギーとして利用される特徴があります。
長時間のトレーニングや、エネルギーが枯渇しやすい減量期において、持久力の維持に貢献する可能性があります。
③ 集中力維持・疲労感の軽減?
BCAA(特にトリプトファンとの関係)が、運動中の脳内のセロトニン濃度に影響を与え、中枢性の疲労感を軽減したり、集中力を維持したりする効果があるのではないか、という研究も行われています。
(まだ議論の余地あり)
効果的な「摂取タイミング」と「摂取量」

もしEAA/BCAAを摂取する場合、いつ、どれくらい摂るのが効果的なのでしょうか?
タイミング:吸収速度を活かすなら「トレーニング中(イントラ)」が最有力
EAA/BCAAの最大のメリットである「吸収速度」を活かすなら、トレーニング中の栄養補給(イントラワークアウトドリンクとして)が最も理にかなっています。
トレーニング中に持続的にアミノ酸を供給することで、筋肉分解を抑制し、エネルギー供給をサポートし、回復を早める効果が期待できます。
トレーニング前(30分前)や、トレーニング直後(プロテインを飲まない場合)も候補となりますが、多くの人はトレ中に水代わりに飲むスタイルを取っています。
摂取量:EAA(10〜15g)、BCAA(5〜10g)が目安
製品によって推奨量は異なりますが、一般的な目安としては…
・EAA:1回あたり10g〜15g程度
・BCAA:1回あたり5g〜10g程度
これを、トレーニング中のドリンク(500ml〜1Lの水)に溶かして、少しずつ飲むのが一般的です。
失敗しない「EAA/BCAAサプリ」の選び方

もし購入する場合の、選び方のポイントです。
① EAA:ロイシン含有比率と全9種類配合を確認
EAA製品を選ぶ際は、「ロイシン」が比較的高濃度(例:全体の25%〜40%程度)で配合されているか、そしてもちろん「必須アミノ酸9種類全て」が配合されているかを確認しましょう。
② BCAA:ロイシン・イソロイシン・バリンの比率(2:1:1が標準)
BCAA製品を選ぶ際は、ロイシン・イソロイシン・バリンの配合比率を確認します。
最も一般的で研究も多いのが「2:1:1」の比率です。
特別な理由がなければ、この比率の製品を選べば間違いありません。
③ フレーバー(味)と溶けやすさ:継続の鍵
アミノ酸は、独特の苦味やエグ味があるため、フレーバー(味付け)が非常に重要です。
美味しくないと継続できません。
レビューなどを参考に、好みの味を見つけましょう。
また、水にサッと溶ける「溶けやすさ」も、ストレスなく飲むために重要です。
④ コストパフォーマンス
EAAはBCAAよりも高価な傾向にあります。
1回あたりのコスト(グラム単価)を計算し、続けられる価格帯の製品を選びましょう。
海外ブランドの大容量パックなどは、比較的コストパフォーマンスが良い場合が多いです。
「味」で挫折した、僕のEAA体験
僕は、EAAが筋肥大に良いと聞き、早速ネットで一番安かった海外ブランドの大容量EAA(ノンフレーバー)を購入しました。
「味なんて気にしない!効果が全てだ!」と意気込んで。
しかし、初めて水に溶かして飲んだ瞬間、僕は後悔しました。
「…まずい!苦い!ケミカルな味がする!」。
例えるなら、薬とプラスチックを混ぜたような、とにかく筆舌に尽くしがたい味でした。
僕は毎回、息を止めて、罰ゲームのようにそれを流し込みました。
しかし、トレーニング中に飲むのが、日に日に苦痛になっていきました。
そして1ヶ月後、僕はEAAを飲むのをやめてしまいました。
どんなに効果が高くても、「不味い」ものは続けられない。
僕は、サプリメント選びにおいて「味」がいかに重要かを、身をもって学びました。
(今は、多少高くても美味しいフレーバー付きのEAAを選んでいます)
まとめ:BCAA・EAAを正しく理解し、賢く活用しよう

BCAAとEAAは、混同されやすく、情報も錯綜しがちなサプリメントです。
しかし、その違いと役割を正しく理解すれば、あなたのトレーニングをサポートする有効なツールとなり得ます。
最後に、重要なポイントをまとめます。
- 基本:EAA(必須アミノ酸9種)の中に、BCAA(3種)が含まれる。
- 筋肥大効果:最新の研究では、材料が全て揃う「EAA」の方が、BCAA単体よりも優位である可能性が高い。
- プロテインとの関係:ホエイプロテインは優れたEAA源。
十分なプロテイン摂取があれば、EAA/BCAAの必須性は低い。 - 単体摂取のメリット:「吸収速度」を活かした「トレーニング中」の栄養補給や、カロリー制限時に有効。
- 期待できる効果:筋分解抑制、エネルギー供給、疲労軽減など(筋肥大以外)。
- 選び方:EAAなら9種配合・ロイシン比率、BCAAなら2:1:1。
「味」と「溶けやすさ」は超重要。
「BCAA/EAAを飲まないと筋肉がつかない」ということは絶対にありません。
最も重要なのは、バランスの取れた食事と、十分なプロテイン摂取です。
その上で、あなたの目的、予算、そしてトレーニングスタイルに合わせて、「追加のブースター」としてEAAやBCAAを賢く活用するかどうかを判断しましょう。



