「ジムに通い始めて半年、ベンチプレスの重量が60kgから全く伸びない…」
「隣のパワーラックで100kgを軽々と挙げている人を見ると、住む世界が違うと感じてしまう…」
「自分には才能がないから、100kgなんて夢のまた夢だ」
多くの男性トレーニーにとって、「ベンチプレス100kg」は特別な響きを持つ数字です。
それは「脱・初心者」の証であり、ジムというヒエラルキーの中で一目置かれる存在になるためのパスポートでもあります。
しかし、多くの人が70kg〜80kgの壁にぶつかり、そこで挫折してしまいます。
断言します。
ベンチプレス100kgに、特別な才能は必要ありません。
体重が50kg台の軽量級でない限り、正しい「物理学(フォーム)」と正しい「数学(プログラム)」を実践すれば、誰でも到達可能な領域です。
あなたが伸び悩んでいるのは、筋力が足りないからではなく、「力の伝え方」と「計画の立て方」を知らないだけなのです。
この記事では、停滞の壁を粉砕し、最短距離で100kgという高みへ到達するための完全ロードマップを、徹底解説します。
この記事でわかること
- 【物理学】体重が軽くても重い物を挙げるための「ブリッジ」と「足」の使い方
- 【数学】停滞期を打破する「5×5法」や「HPSプログラム」の具体的な組み方
- 【補強】ベンチプレスを伸ばすために鍛えるべき「意外なサブ部位」
第1章:100kgの壁の正体。あなたは今、どの地点にいるか?

まずは現状把握です。
100kgという数字がどれくらいの難易度なのか、客観的なデータを見てみましょう。
ベンチプレス100kgは「人口の上位1%」の偉業
日本のフィットネス人口は全人口の約3〜4%と言われています。
その中で、ベンチプレス100kgを挙げられる人は、さらにその中の数%に過ぎません。
つまり、日本人全体で見れば「100人に1人もいない」レベルの怪力なのです。
簡単ではありませんが、だからこそ目指す価値があります。
体重別・100kg達成の難易度(RM換算)
あなたの体重によって、100kgの難易度は変わります。
目安として、以下の表を参考にしてください。
| あなたの体重 | 100kg達成の難易度 | 到達までの目安期間 |
|---|---|---|
| 60kg未満 | S級(超難関) | 1年〜2年以上 |
| 60kg〜70kg | A級(難関) | 1年〜1年半 |
| 70kg〜80kg | B級(努力で到達可能) | 半年〜1年 |
| 80kg以上 | C級(通過点) | 3ヶ月〜半年 |
もしあなたが体重60kg台なら、100kgは「体重の約1.5倍」を持ち上げることになります。
これはアスリート並みの数値です。
焦らず、長期戦になることを覚悟して挑みましょう。
第2章:【物理学】腕力に頼るな。「全身」で挙げるためのフォーム革命

ベンチプレスを「胸と腕の運動」だと思っていませんか?
それが、あなたが伸び悩んでいる最大の原因です。
100kgを挙げるためのベンチプレスは、「足で地面を押し、背中で支え、全身のバネを使って押し上げる」全身運動です。
1. 「アーチ(ブリッジ)」が高重量の鍵を握る
背中を反らせてアーチを作ることは、単に可動域を狭くする「ズル」ではありません。
肩の怪我を防ぎ、大胸筋下部という強い筋肉を動員するための必須テクニックです。
正しいアーチの作り方 3ステップ
- 肩甲骨を寄せて下げる:ベンチ台に寝る前に、肩甲骨を背骨の中央に寄せ、さらにお尻の方へ下げます(下制)。これで肩がロックされます。
- お尻をつけたままで足を引く:お尻をベンチにつけたまま、足をできるだけ頭の方へ引き込みます。膝が鋭角になります。
- 「みぞおち」を天井に突き出す:バーベルを見るのではなく、胸を天井にぶつけるイメージで高く突き上げます。
2. グリップ:手首を立てるか、寝かせるか
手首が完全に返ってしまっている(背屈)と、力が逃げるだけでなく手首を痛めます。
バーベルは「手のひらの真ん中」ではなく、「手首の骨の真上(拇指球の下)」に乗せます。
前腕の骨の上に垂直にバーが乗っている状態を作ることで、力がダイレクトに伝わります。
3. レッグドライブ:出力は「足」から生まれる
これが最も重要かつ、初心者ができていないポイントです。
ベンチプレスは上半身の種目ですが、始動は「足」です。
- × 悪い例: 足がプラプラしている、つま先立ちで踏ん張りが効かない。
- ◎ 良い例: 足裏全体(または踵)を床にベタっとつけ、「床を頭の方向へ蹴る」ように力を入れる。
この「床を蹴る力」が背中を伝わって、バーベルを押し上げる推進力になります。
これを「レッグドライブ」と呼びます。
バーを下ろす時に息を吸いながら足を強く踏ん張り、挙げる瞬間にその反発力を利用する感覚を掴んでください。
第3章:【数学】「毎回MAX挑戦」は卒業。停滞を打破するプログラム

「ジムに行くたびに、とりあえず100kgに挑戦して、潰れて帰る」
この「根性トレーニング」では、神経系が疲弊し、怪我のリスクが高まるだけで強くなりません。
重量を伸ばすには、計画的な「ピリオダイゼーション(期分け)」が必要です。
初心者に最強のプログラム「5×5法(ファイブ・バイ・ファイブ)」
筋肥大と筋力向上を同時に狙える、シンプルかつ強力なプログラムです。
| ルール | メインセットで「5回 × 5セット」を行う |
|---|---|
| 重量設定 | 5回ギリギリ挙がる重量ではなく、「少し余裕を持って5回挙がる重量」からスタート |
| 進行方法 | 5セット全てクリアできたら、次回トレーニングで2.5kg増やす |
| 失敗した場合 | 次回も同じ重量で挑戦。3回連続で失敗したら重量を10%落として再スタート |
例えば、80kgで5回5セットができたら、次は82.5kgに挑みます。
これを繰り返すことで、着実に筋力が底上げされます。
「MAX重量」を伸ばすのではなく、「セット重量」を伸ばすことに集中するのがコツです。
中級者向け:HPSトレーニング(高頻度・波動法)
「5×5法」でも伸びなくなった人は、刺激の種類を日によって変える手法が有効です。
週3回ベンチプレスを行い、それぞれ役割を変えます。
- Day1(肥大の日): 8回 × 4セット(中重量)… 筋量を増やす
- Day2(パワーの日): 3回 × 5セット(高重量)… 神経系を強化し、重さに慣れる
- Day3(スピードの日): 12回 × 3セット(低重量)… フォーム固めと爆発的挙上
このように刺激を「散らす」ことで、オーバートレーニングを防ぎながら、効率よく重量を伸ばせます。
⚠ 停滞期(プラトー)の過ごし方
どうしても重量が伸びない時は、思い切って「1週間ベンチプレスを休む(ディロード)」か、「補助種目だけをやる期間」を設けてください。
疲労が抜けた翌週、嘘のように軽く挙がることがあります。
「押してダメなら引いてみろ」は筋トレの鉄則です。
第4章:【補強】ベンチプレスを伸ばすための「裏メニュー」

ベンチプレスばかりやっていても、ベンチプレスは伸びません。
「主動筋(胸)」だけでなく、「協働筋(肩・三頭)」と「拮抗筋(背中)」を鍛えることが、100kgへの近道です。
1. 上腕三頭筋(二の腕)の強化
ベンチプレスで「バーを胸から半分くらい挙げたところ」で止まってしまう場合、原因は三頭筋の弱さです。
「ナローベンチプレス」や「ディップス」、「ライイング・トライセプス・エクステンション」で、馬蹄形の太い腕を作りましょう。
太い腕は、高重量を受け止めるサスペンションになります。
2. 三角筋(肩)前部の強化
バーを胸から浮かせた瞬間の初動負荷に関与します。
「オーバーヘッドプレス(ミリタリープレス)」で、肩自体のプレス力を強化しましょう。
頭上に重いものを挙げる力は、ベンチプレスの安定感に直結します。
3. 広背筋(背中)の強化
「押す種目なのになぜ背中?」と思うかもしれません。
しかし、背中はベンチプレスの「土台」です。
土台がグラグラしていては、大砲(胸と腕)は撃てません。
「ベントオーバーロウ」や「懸垂」で分厚い背中を作ることで、ベンチ台に体が張り付き、安定した軌道でバーを下ろせるようになります。
第5章:100kgを挙げるための「装備」と「メンタル」

最後に、物理的・精神的なサポートについてです。
ギア(装備)は甘えではない。必須アイテムだ
怪我を防ぎ、出力を100%出し切るために、以下のギアは早い段階で揃えてください。
- リストラップ:手首をガチガチに固定し、力が逃げるのを防ぐ。60cm程度の硬めのものがおすすめ。
- トレーニングベルト:腹圧を高め、アーチを安定させる。
- 滑り止めのシャツ:背中がベンチ台で滑るとアーチが崩れる。背中に滑り止め加工があるシャツや、A7などのバーグリップシャツが有効。
恐怖心に打ち勝つメンタルセット
100kgのバーベルは、視覚的にも恐怖を感じます。
「潰れたらどうしよう」「首に落ちたら死ぬ」
この恐怖心が体にブレーキをかけます。
- 必ずセーフティバーを適切な高さに設定する。
- 可能なら補助者(スポッター)についてもらう。
- ラックアップした瞬間、「軽い!」と口に出して脳を騙す。
安全が担保されているという確信が、あなたのリミッターを解除します。
まとめ:100kgはゴールではない。真の筋トレライフの始まりだ

ベンチプレス100kgへの道は、決して平坦ではありません。
何度も壁にぶつかり、フォームを見直し、地味な補助種目を積み重ねる日々の連続です。
しかし、そのプロセスこそがあなたを強くします。
そして、ついに100kgが挙がった瞬間。
ジムの天井を見上げながら感じる達成感と、手のひらに残る重みは、一生の宝物になるでしょう。
そして気づくはずです。
「100kgはゴールじゃなかった。ここからが本当のスタートなんだ」と。
さあ、次のジムでは、いつもの重量にプラス2.5kg、勇気を出して追加してみましょう。
その小さな一歩が、100kgへの偉大な第一歩です。




