「減量中だから、アブラものは全部敵!鶏肉もササミ一択だし、ドレッシングはもちろんノンオイル…これで完璧なはず!」
「『良い脂質は摂るべき』って聞くけど、結局どれが良くてどれが悪いのか、よく分からない。間違って、ただ太るだけになったら嫌だしな…。」
「脂質=太る」——。その考えは、ボディメイクにおける根深い呪いのようなものです。
しかし、もしその呪いのせいで、あなたの筋肉の成長が妨げられ、コンディションが悪化しているとしたら…?
真実は、質の良い脂質は、筋肉の成長に不可欠なホルモンを高め、トレーニングの炎症を抑える、最強の「攻め」の栄養素なのです。
この記事では、脂質に対するあらゆる誤解を解き、あなたのボディメイクをネクストレベルへと引き上げるための「戦略的脂質活用術」を徹底解説します。もう、あなたは漠然と脂質を怖がる必要はありません。

この記事でわかること
- もう迷わない「良い脂質」と「悪い脂質」の具体的な見分け方
- 筋肉の成長と回復をサポートするオメガ3脂肪酸の驚くべき効果
- 増量期・減量期における目的別の戦略的な脂質コントロール術
【基礎知識】なぜ脂質は「悪者」ではないのか?トレーニーにとっての3つの重要な役割
脂質を単なるカロリーの塊と考えるのは大きな間違いです。
私たちの身体、特にトレーニーの身体にとって、脂質は不可欠な役割を担っています。
役割1:テストステロンなど、筋肥大ホルモンの材料になる
筋肉の成長に大きく関わる男性ホルモン「テストステロン」。
このテストステロンは、コレステロールなどの脂質を材料として体内で合成されます。
極端な低脂質食は、テストステロン値の低下を招き、筋肥大の効率を著しく悪化させる危険性があるのです。
役割2:細胞膜を構成し、栄養の取り込みをサポートする
私たちの身体にある約37兆個の細胞は、すべて脂質からなる「細胞膜」に覆われています。
この細胞膜の質が良いと、筋肉細胞は栄養素を効率的に取り込み、老廃物をスムーズに排出できます。
良い脂質は、筋肉が成長しやすい体内環境の土台を作るのです。
役割3:関節の潤滑油となり、怪我を予防する
高重量を扱うトレーニーにとって、関節の健康は生命線です。
良質な脂質には、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような働きがあり、トレーニングによる摩耗や損傷から関節を守ってくれます。
【脂質の分類】これを覚えれば完璧!「味方」と「敵」の見分け方
脂質と一括りにせず、その種類を正しく見分けることが、賢い脂質摂取の第一歩です。
ここでは大きく4つのタイプに分類して解説します。
味方になる脂質①:多価不飽和脂肪酸(オメガ3・オメガ6)
体内で生成できず、食事から摂取する必要がある「必須脂肪酸」です。
オメガ3脂肪酸:最重要!筋肉の炎症を抑えるスーパー脂質
現代人が最も不足しがちな、最重要の脂質。
青魚(EPA・DHA)や亜麻仁油(α-リノレン酸)に多く含まれ、トレーニングによる筋肉の炎症を抑え、回復を促進する効果があります。
オメガ6脂肪酸:摂りすぎ注意の必須脂肪酸
サラダ油やごま油などに多く含まれ、適量であれば重要ですが、現代の食生活では過剰摂取になりがち。
摂りすぎると体内の炎症を促進してしまうため、意識して減らすことが推奨されます。
味方になる脂質②:一価不飽和脂肪酸(オメガ9)
オリーブオイルやアボカドに多く含まれ、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
熱に強く、調理油としても使いやすい優秀な脂質です。
注意が必要な脂質:飽和脂肪酸
肉の脂身やバター、乳製品に多く含まれます。
テストステロンの材料になるなど重要な役割もありますが、摂りすぎは悪玉コレステロールを増やし、生活習慣病のリスクを高めます。
敵ではありませんが、摂取量には注意が必要な脂質です。
絶対に避けるべき敵:トランス脂肪酸
マーガリンやショートニング、それらを使用した菓子パン、スナック菓子などに含まれる、自然界にはほとんど存在しない人工的な脂質です。
「食べるプラスチック」とも呼ばれ、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす最悪の脂質として知られています。
【実践編】トレーニーが積極的に摂るべき「良い脂質」トップ5
理論は分かったけど、具体的に何を食べれば良いの?という方のために、明日から食事に取り入れられる食品を5つ厳選しました。
- 青魚(サバ、イワシ、サンマ):最強のオメガ3供給源。可能であれば週に2〜3回は食卓へ。サバ缶なら手軽に摂取できます。
- アボカド:「森のバター」と呼ばれる栄養の宝庫。オメガ9に加え、ビタミン、ミネラル、食物繊維も豊富です。
- ナッツ類(アーモンド、くるみ):手軽な良質脂質源。特にくるみはオメガ3も豊富。ただしカロリーは高いので、1日ひとつかみ程度に。
- 良質なオイル(オリーブオイル、亜麻仁油):調理油はエキストラバージンオリーブオイルに。サラダには熱に弱い亜麻仁油をかけるのがおすすめです。
- 卵(卵黄):栄養豊富な天然のサプリメント。卵黄に含まれるコレステロールは、テストステロンの重要な材料になります。
エピソード:カサカサだった僕が「潤い」を取り戻した日
減量に夢中だった頃の僕は、徹底的な低脂質主義者でした。
鶏肉は皮なしササミ、調理は蒸すだけ。
体重は落ちましたが、肌は乾燥してカサカサ、髪はパサパサ、そして何よりトレーニング中の集中力が続かない。
ある時、トレーナーに勧められて、恐る恐るアボカド半分とアーモンド10粒を毎日の食事に加えてみたのです。
1週間後、驚くべき変化が。
肌に自然なツヤが戻り、便通も改善。
そして何より、トレーニングの最後まで粘れるエネルギーが湧いてくる。
脂質は敵じゃない、身体を内側から潤してくれる最高のパートナーなのだと、身をもって知りました。
【目的別】増量期と減量期における脂質コントロール術
あなたの目的によって、脂質との付き合い方は変わってきます。
増量期:テストステロン値を高め、筋肥大をサポート
筋肥大を最大化したい増量期は、ホルモンレベルを高く保つためにも、脂質をしっかり摂取することが重要です。
総摂取カロリーの25〜30%を目安に、不飽和脂肪酸を中心にしつつ、卵や赤身肉から飽和脂肪酸も適度に摂取しましょう。
減量期:良質な脂質で、ホルモンバランスと満足感を維持
カロリー制限でホルモンバランスが乱れがちな減量期こそ、良質な脂質の摂取が不可欠です。
総摂取カロリーの20〜25%は確保し、特に筋肉の炎症を抑えるオメガ3を意識的に摂取することで、回復を助け、トレーニングの質を維持できます。
また、脂質は腹持ちが良いため、空腹感を和らげる効果も期待できます。
【サプリ活用術】フィッシュオイルとMCTオイルを使いこなす
食事から十分に摂取するのが難しい場合は、サプリメントを賢く活用するのも一つの手です。
フィッシュオイル(EPA・DHA):最もおすすめの脂質サプリ
青魚に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)を手軽に摂取できるサプリメント。
関節痛の緩和、血液サラサラ効果、集中力向上など、トレーニーにとって計り知れないメリットがあります。
迷ったら、まずこれを試してみる価値はあります。
MCTオイル:素早くエネルギーになる特殊なオイル
ココナッツオイルなどに含まれる「中鎖脂肪酸」だけを抽出したオイル。
通常の脂質と異なり、肝臓で素早く分解され、エネルギーとして利用されやすい特徴があります。
減量中のエネルギー補給や、ケトジェニックダイエットに活用されます。
エピソード:長年の相棒だった「肘の痛み」との別れ
ベンチプレスやショルダープレスをすると、必ず右肘に鈍い痛みが走る。
それが、僕の長年の悩みでした。
サポーターをしたり、フォームを見直したり、色々試しましたが改善しない。
半信半疑で飲み始めたのが、フィッシュオイルのサプリでした。
最初の1ヶ月は何も感じませんでしたが、3ヶ月ほど経ったある日、ふと気づいたのです。
「そういえば最近、肘が痛くない…」。
身体の内側から炎症が抑えられていく感覚。
それは、僕のトレーニングの質を、そして何よりトレーニングの楽しさを、一段上のレベルへと引き上げてくれました。
まとめ:脂質を制する者は、コンディションを制する
脂質に対するイメージは変わりましたでしょうか。
脂質は、もはやあなたが恐れるべき敵ではありません。
その種類と役割を正しく理解し、戦略的に摂取することで、あなたの身体を内側から作り変え、コンディションを劇的に向上させる最強の味方となるのです。
これからは、漠然とアブラを避ける「守りの食事」から、良質なアブラを積極的に摂りにいく「攻めの食事」へ。
その一歩が、あなたのボディメイクを新たなステージへと導くはずです。