「ジムで1時間もランニングマシンで走るのは、正直退屈だし時間がない…」
「短時間で効率よく脂肪を燃やせる『HIIT』って聞いたけど、具体的にどうやるの?」
「HIITって、ただ全力で走ればいいの?キツそうだし、怪我しないか心配…」
「たった数分〜20分程度の運動で、長時間の有酸素運動を超える脂肪燃焼効果が期待できる」——そんな夢のようなトレーニング法が、「HIIT(ヒット:高強度インターバルトレーニング)」です。
忙しい現代人にとって、「時短」と「高効率」を両立できるHIITは、非常に魅力的な選択肢であり、多くのジム利用者が関心を寄せています。
しかし、その圧倒的な効果の裏には、「高強度」であるがゆえの正しいやり方と、守るべき注意点が存在します。
「なんとなく全力で動く」だけでは、その効果を最大限に引き出せないどころか、怪我のリスクを高めてしまう可能性すらあるのです。
この記事では、なぜHIITが最強の脂肪燃焼トレーニングと呼ばれるのか、その科学的根拠(アフターバーン効果)から、ジムのマシン(トレッドミル、バイク)を使った具体的な実践プログラム、そして筋トレとの最適な組み合わせ方、絶対に守るべき注意点まで、徹底的に解説します。
もう退屈な有酸素運動に時間を溶かすのはやめましょう。
この記事でわかること
- なぜHIITが短時間で高い脂肪燃焼効果を生むのか(アフターバーン効果)
- ジムのマシン(トレッドミル、バイク)を使ったHIITの具体的なやり方
- 筋トレとHIITを組み合わせる際の最適な順番と、絶対に守るべき注意点
HIIT(高強度インターバルトレーニング)とは何か?

HIIT(High-Intensity Interval Training)とは、その名の通り、「高強度の運動」と、「短時間の休息(または低強度の運動)」を交互に繰り返すトレーニング法のことです。
「高強度」と「短時間休息」を繰り返すトレーニング法
例えば、「20秒間、心拍数が限界に達するほどの全力運動 → 10秒間、完全に休息」というサイクルを、8回繰り返す(合計4分間)——これが、HIITの代表的なプロトコルの一つである「タバタ式」です。
ポイントは、「息が切れるほど」あるいは「もうこれ以上動けない」と感じるほどの「高強度」で追い込むことにあります。
なぜ「たった数分」で効果が出るのか?その科学的根拠
「たった4分や20分で、1時間のランニングより効果があるなんて信じられない」と思うかもしれません。
その秘密は、運動中だけでなく、「運動後」にも脂肪が燃え続ける現象にあります。
HIITがもたらす「3つの絶大な効果」

正しく行われたHIITは、体に強烈な負荷をかけ、劇的な変化をもたらします。
① 最強の脂肪燃焼効果と「アフターバーン効果(EPOC)」
これがHIIT最大の魅力です。
高強度の運動を行うと、体は一時的に「酸欠状態」になります。
トレーニングが終わった後、体はこの酸欠状態から回復し、体内の状態を平常時に戻そうと必死に働きます。
この回復プロセスには、大量の酸素が必要となり、そのエネルギー源として「脂肪」が燃焼され続けます。
この「運動後過剰酸素消費量(EPOC)」こそが、「アフターバーン効果」の正体です。
運動自体で消費するカロリーに加え、運動後も(最大24〜48時間とも言われる)脂肪が燃え続ける状態を作り出すため、短時間でも非常に高い脂肪燃焼効果が期待できるのです。
② 心肺機能(持久力)の劇的な向上
HIITは、心臓に極めて高い負荷をかけます。
「全力運動」で心拍数を最大近くまで引き上げ、「休息」で少し下げる、というプロセスを繰り返すことは、心臓のポンプ機能と、酸素を取り込む能力(最大酸素摂取量, VO2max)を効率よく鍛え上げます。
長時間のランニングよりも、短時間で心肺機能(持久力)を劇的に向上させる効果が多くの研究で示されています。
③ 成長ホルモンの分泌促進による筋肉維持・増加?
HIITのような極めて高強度の運動は、成長ホルモンの分泌を強力に促進することが知られています。
成長ホルモンは、筋肉の合成を促し、脂肪の分解を助ける働きがあります。
長時間の有酸素運動が筋肉の分解(カタボリック)リスクを高めるのに対し、HIITはむしろ筋肉量を「維持」または「微増」させながら、脂肪を減らすのに役立つ可能性があるのです。
(ただし、主な目的は筋肥大ではありません)
HIIT vs LISS(低強度有酸素):どっちが痩せる?

HIITの対極にあるのが、従来型の有酸素運動「LISS」です。
LISS(長時間・低強度)のメリット・デメリット
LISS(Low-Intensity Steady State)とは、ウォーキングやジョギングなど、「低強度」の運動を「長時間(30分〜1時間以上)」継続して行う有酸素運動です。
・メリット:精神的な負担が少なく、取り組みやすい。
怪我のリスクが低い。
運動中の脂肪燃焼比率が高い。
リラックス効果。
・デメリット:時間がかかる。
退屈で飽きやすい。
アフターバーン効果はほぼ期待できない。
やりすぎると筋肉分解リスク。
HIIT(短時間・高強度)のメリット・デメリット
・メリット:圧倒的に時短。
アフターバーン効果による高い脂肪燃焼効率。
心肺機能の向上。
筋肉が減りにくい(むしろ増える可能性も)。
・デメリット:精神的・肉体的に非常にキツい。
怪我のリスクがLISSより高い。
高頻度では行えない(オーバートレーニングになる)。
結論:目的と好みに応じて使い分ける
「時間がなく、短時間で効率よく脂肪を燃やしたい」「キツいトレーニングが好き」という人にはHIITが向いています。
「運動が苦手で、ゆっくり長く続けたい」「怪我のリスクを最小限にしたい」という人にはLISSが向いています。
もちろん、両方を組み合わせる(例:週2回HIIT、週2回LISS)のも賢い戦略です。
1時間のランニングをやめたら、痩せ始めた
私は、減量のために週4回、ジムで1時間ランニングマシンで走ることを日課にしていました。
でも、体重は最初の数キロ落ちただけで、すぐに停滞。
何より、毎日1時間走るのが退屈で苦痛でした。
そんな時、「HIIT」の存在を知り、「短時間で済むなら…」と試してみることに。
ジムのエアロバイクで、プログラムは「30秒全力ダッシュ→30秒ゆっくり漕ぐ」を15セット(合計15分)。
最初の全力ダッシュ30秒で、太ももは焼け付くようになり、心臓は張り裂けそう。
15分後、僕は床に倒れ込みました。
「たった15分で、こんなにキツいのか…」。
そのHIITを週3回、筋トレとは別の日に取り入れ、ランニングは一切やめました。
すると、1ヶ月後。
停滞していた体重が、再び落ち始めたのです!
しかも、脚の筋肉が落ちるどころか、むしろ張りが出てきた感覚。
僕は、長時間ダラダラ走るよりも、短時間で自分を追い込む方が、自分には合っていたのだと気づきました。
何より、「15分で終わる」という手軽さが、継続のモチベーションになりました。
【実践編】ジムのマシンを使ったHIITの「正しいやり方」

HIITは自宅でもできますが、ジムのマシンを使えば、天候に左右されず、負荷設定も正確に行えます。
最も重要なのは「全力」と「休息」のメリハリです。
(実施前には必ず5分程度のウォーミングアップを行ってください)
HIITの基本プロトコル:「タバタ式」(20秒+10秒)とは?
HIITには様々な時間設定(プロトコル)がありますが、最も有名で効果が実証されているのが、日本の立命館大学・田畑泉教授が考案した「タバタ・プロトコル」です。
・【20秒間の超高強度運動】 → 【10秒間の完全休息】
・これを「8セット」繰り返す。
・合計時間は、わずか「4分間」。
「20秒間、全力を出し切り、10秒でギリギリ回復し、また全力を出す」という、非常に過酷なトレーニングですが、その効果は絶大です。
もちろん、他のプロトコル(例:30秒運動+30秒休息、60秒運動+60秒休息など)でも効果は期待できます。
自分の体力レベルに合わせて選びましょう。
① トレッドミル(ランニングマシン)でのHIIT
・やり方:
1. 安全な速度(例:時速15km以上など、自分にとっての「全力疾走」)と、休息時の速度(例:時速5kmのウォーク)を設定する。
2. 高強度運動の時間(例:20秒)になったら、設定した全力疾走の速度で走る。
3. 休息時間(例:10秒)になったら、速度を落として歩くか、マシンの横のレールに掴まって足を止める。
4. これを繰り返す。
【注意点】安全な速度設定と緊急停止ボタンの確認
トレッドミルでのHIITは、最も怪我のリスクが高いです。
速度変更が間に合わなかったり、疲労で足がもつれたりすると、転倒してベルトで引きずられ、大怪我をする危険性があります。
・絶対に無理な速度設定をしない。
・必ず「緊急停止クリップ」を衣服に装着する。
・速度変更に慣れるまでは、休息時間を長め(例:30秒運動+60秒休息)にする。
② エアロバイク(スピンバイク)でのHIIT
【最強推奨】最も安全かつ高強度で追い込める
HIITをジムで行う上で、最も「安全」かつ「効果的」でおすすめなのが、エアロバイク(特にスピンバイク)です。
・やり方:
1. 負荷(ペダルの重さ)を「全力で漕いでもギリギリ」の高強度に設定する。
2. 高強度運動の時間(例:20秒)、全力でペダルを漕ぐ。
3. 休息時間(例:10秒)、ペダリングを止めるか、負荷を下げてゆっくり漕ぐ。
4. これを繰り返す。
転倒のリスクがゼロであり、膝への負担も少ないため、安全に心拍数を限界まで追い込むことができます。
③ クロストレーナーでのHIIT
全身運動としてのメリットと負荷設定
クロストレーナー(エリプティカル)も、足がペダルに固定されているため安全です。
・やり方:
1. 負荷レベルを、全力で動かしてキツいと感じるレベルに設定する。
2. 高強度運動の時間、腕と脚を連動させて全力で動かす。
3. 休息時間、動きを止めるか、ゆっくり動かす。
腕も使う全身運動になるため、消費カロリーがさらに高まる可能性があります。
【最重要】筋トレとHIITの「最適な組み合わせ方」

「HIITが良さそうなのは分かった。
じゃあ、筋トレの日に一緒にやればいいの?」
この「組み合わせ方」こそ、HIITを実践する上で最も重要な注意点です。
原則:筋トレとHIITは「同日」に行うべきではない?
結論から言えば、「筋肥大」を最優先の目的とするならば、高強度の筋トレと、高強度のHIITを「同じ日」に行うことは、推奨されません。
理由は主に3つあります。
① エネルギー源(グリコーゲン)の枯渇問題
高強度の筋トレも、高強度のHIITも、どちらも主なエネルギー源は「糖質(筋グリコーゲン)」です。
筋トレでグリコーゲンを使い果たした後にHIITを行おうとしても、エネルギー切れで全力を出し切れず、HIITの効果が得られません。
逆に、HIITを先に行えば、筋トレの質が壊滅的に低下します。
② 神経系の極度の疲労
高強度の運動は、筋肉だけでなく「中枢神経系」も著しく疲労させます。
筋トレとHIITを同日に行うことは、神経系に過剰なストレスをかけ、回復を著しく遅らせ、オーバートレーニングの状態を招くリスクが非常に高いです。
③ 筋肉の合成シグナル(mTOR)と分解シグナル(AMPK)の干渉リスク
前回の記事(筋トレと有酸素)でも触れましたが、筋トレは筋肥大のスイッチ「mTOR」を活性化させます。
一方、HIITのような高強度の持久系トレーニングは、エネルギー不足を感知する「AMPK」を活性化させます。
そして、AMPKが活性化すると、mTORの働きが「抑制」されてしまう可能性があるのです。
(これを「コンカレントトレーニングによる干渉効果」と呼びます)
つまり、せっかくの筋トレによる筋肥大効果を、HIITが打ち消してしまう可能性があるのです。
どうしても同日に行う場合の「妥協案」とは?
理想は、「筋トレの日」と「HIITの日」を完全に分けることです。
(例:月・水・金は筋トレ、火・木はHIIT)
しかし、週に何日もジムに行けない場合はどうすればよいか?
・妥協案①:「筋トレ」を先に行い、その「後」に、HIITの強度や時間をやや落として(例:4分タバタのみ)行う。
・妥協案②:朝にHIIT、夜に筋トレ(またはその逆)など、最低でも6〜8時間以上の間隔を空ける。
(※ただし、いずれも疲労と回復には細心の注意が必要です)
HIITで失敗しないための「注意点」と「リスク」

HIITは、効果が高い分、リスクも伴います。
安全に行うための絶対条件です。
①「高強度」ゆえの怪我のリスク(特にトレッドミル)
「全力」を出すということは、それだけ怪我のリスクも高まります。
特にトレッドミルでの転倒は非常に危険です。
ウォーミングアップを絶対に行い、自分の体力レベルを過信せず、安全なマシン(バイクなど)を選ぶことが重要です。
② やりすぎは厳禁!オーバートレーニングの元(週2〜3回が限度)
「早く痩せたいから」と毎日HIITを行うのは、最悪の選択です。
体と神経系の回復が全く追いつかず、すぐにオーバートレーニングに陥り、体調を崩します。
HIITは、多くても「週に2〜3回」が限度と考え、必ず筋トレの日や他の運動日との間に十分な休養日を設けましょう。
③ 空腹時・満腹時を避ける
完全な空腹時に行うと、エネルギー切れで全力を出し切れないだけでなく、筋肉の分解リスクも高まります。
逆に、満腹時に行うと、消化不良や吐き気を催します。
食事から最低でも1〜2時間は空けて行いましょう。
④ 高血圧・心疾患の不安がある人は厳禁
HIITは、心拍数と血圧を急激に上昇させます。
高血圧、心臓疾患、その他健康上の不安がある人は、絶対に自己判断で行ってはいけません。
必ず医師に相談してください。
「毎日HIIT」で燃え尽きた僕
「HIITは痩せる!」という情報に飛びついた僕は、減量を加速させようと、筋トレ(週3回)に加えて、HIIT(タバタ式バイク)を「毎日」やるという無謀な計画を立てました。
最初の数日は、強烈な疲労感と達成感がありました。
しかし、1週間が過ぎた頃から、異変が起きました。
朝、起き上がれないほどの疲労感。
筋トレの日も、全く力が入らず、重量が落ちていく。
イライラが止まらず、仕事にも集中できない。
そして、ついには風邪をひいて寝込んでしまいました。
僕は、回復の重要性を無視し、体を「追い込む」ことだけを考えていたのです。
HIITは劇薬でした。
正しく使えば薬になりますが、量を間違えれば「毒」になる。
僕は、オーバートレーニングという「毒」に、まんまとやられてしまったのです。
復帰後は、HIITは週2回、筋トレとは別の日に行うように改めました。
「やりすぎ」は「やらなさすぎ」よりも、はるかに罪が重いことを学びました。
まとめ:HIITを正しく理解し、効率よく「動ける体」を手に入れよう

HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、正しく実践すれば、「脂肪燃焼」と「心肺機能向上」を、驚くべき短時間で実現可能にする、非常に強力なトレーニング手法です。
しかし、その「高強度」という特性は、諸刃の剣でもあります。
HIITを成功させるための鍵を、最後にまとめます。
- 効果の源泉:「アフターバーン効果(EPOC)」による運動後の脂肪燃焼。
- やり方:「全力運動」と「短い休息」のメリハリが命。
ジムなら「エアロバイク」が最も安全で追い込める。 - 筋トレとの関係:筋肥大効果の干渉リスクがあるため、「別の日」に行うのが理想。
同日なら十分な間隔を空けるか、強度を調整。 - 最大の注意点:「やりすぎ厳禁」。
週2〜3回が限度。
怪我のリスク、神経系の疲労を甘く見ない。 - 安全第一:ウォーミングアップ必須。
健康に不安がある人は絶対に行わない。
「退屈な長時間の有酸素運動」から解放されたいあなたにとって、HIITは最高の解決策になるかもしれません。




