「スクワットで膝がちょっと不安…。サポーターみたいなのを使った方がいいのかな?」
「ベンチプレスで肘に違和感が…。悪化する前に何か対策したいけど、何がいいんだろう?」
「ジムで膝や肘に黒い布みたいなの巻いてる人いるけど、あれは何?ニースリーブ?エルボースリーブ?効果あるの?」
筋トレで高重量を追い求める上で、避けては通れないのが「関節」への負担です。
特に、スクワットにおける「膝」や、ベンチプレス・ショルダープレスにおける「肘」は、違和感や軽い痛みを経験する人が非常に多い部位です。
「まだ大丈夫」と放置していると、深刻な怪我に繋がり、長期間トレーニングができなくなる可能性もあります。
そんな関節への不安を軽減し、あなたのパフォーマンスをさらに引き上げてくれる可能性を秘めたギアが、「ニースリーブ」と「エルボースリーブ」です。
しかし、これらは医療用の「サポーター」とは目的も効果も異なります。
「なんとなく」で選んで使っても、期待する効果は得られません。
この記事では、ニースリーブとエルボースリーブがもたらす真の効果(保温・圧迫・固有受容覚)から、サポーターとの違い、あなたに必要なのかどうかの判断基準、そして失敗しないための「厚さ」「サイズ」の選び方、効果を最大化する使い方まで、徹底的に解説します。
この記事でわかること
- ニースリーブ・エルボースリーブの主な3つの効果と医療用サポーターとの違い
- あなたにスリーブが必要かどうかの判断基準となる「3つのサイン」
- 失敗しないための「厚さ(3mm/5mm/7mm)」と「サイズ」の正しい選び方
ニースリーブ・エルボースリーブとは?「サポーター」とは違う?

まず、混同されがちな「スリーブ」と「サポーター」の違いを明確にしておきましょう。
① 主な目的:「保温」「圧迫」「固有受容覚の向上」
ニースリーブやエルボースリーブは、主にネオプレンなどの伸縮性・保温性に優れた素材で作られた、筒状のギアです。
その主な目的は以下の3つです。
1. 保温:関節周りの温度を高く保ち、血流を促進する。
2. 圧迫:適度な圧迫を加えることで、関節の安定感を高める(感覚的な要素が大きい)。
3. 固有受容覚の向上:皮膚への圧迫刺激を通じて、脳が関節の位置や動きをより正確に把握できるようにする。
これらは、関節の動きを「制限」するのではなく、むしろ「サポート」し、「パフォーマンスを高める」ことを目的としています。
② 医療用サポーター(固定・制限)との根本的な違い
一方、薬局などで売られている医療用やスポーツ用の「サポーター」は、関節の可動域を「制限」したり、「固定」したりすることで、痛みを軽減したり、怪我の再発を防いだりすることを主な目的としています。
素材も、スリーブより硬い素材や、金属の支柱が入っているものもあります。
筋トレのパフォーマンス向上を目的とするスリーブとは、根本的な設計思想が異なります。
スリーブ装着による「3つの主な効果」とは?

では、スリーブを装着することで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか?
効果①:関節の保温と血流促進(ウォーミングアップ効果)
ネオプレン素材による保温効果は、関節周りの筋肉や腱の温度を高め、血流を促進します。
これにより、ウォーミングアップの効果が高まり、関節がスムーズに動くようになり、怪我の予防に繋がります。
特に寒い時期のトレーニングでは、この保温効果は非常に重要です。
効果②:適度な圧迫による安定感向上と痛みの軽減(感覚的なもの)
スリーブによる適度な圧迫感は、関節周りの組織をサポートし、「守られている」「安定している」という感覚的な安心感を与えます。
これにより、高重量への恐怖心が和らいだり、軽い関節の違和感や痛みが軽減されたりする効果が期待できます。
(※ただし、痛みを根本的に治す効果はありません)
効果③:固有受容覚(関節の位置感覚)の向上による動作の安定
「固有受容覚」とは、目をつぶっていても自分の手足がどこにあるか分かるような、「体の位置や動きに関する感覚」のことです。
スリーブによる皮膚への圧迫刺激は、この固有受容覚を高める効果があると考えられています。
これにより、脳は膝や肘の曲げ伸ばしの角度や速度をより正確に把握できるようになり、スクワットやベンチプレスなどの動作が安定し、フォームの精度向上に繋がります。
注意点:スリーブは「怪我を治す」ものではない
重要な注意点として、スリーブは既存の怪我や痛みを「治療」するものではありません。
もし強い痛みがある場合は、スリーブに頼ってトレーニングを続けるのではなく、まずは医師の診察を受けるべきです。
スリーブは、あくまで「予防」や「パフォーマンス向上」のための補助的なギアであると理解しましょう。
「守られてる感」がスクワットの恐怖を消した
僕は、スクワットで100kgを超えたあたりから、膝に漠然とした「不安感」を抱えるようになりました。
特に痛みがあるわけではないのですが、しゃがみ込む時に「グキッといったらどうしよう…」という恐怖心が拭えなかったのです。
そのせいで、思い切って深くしゃがめず、重量も伸び悩んでいました。
ジムの先輩に相談すると、「ニースリーブ、試してみたら?精神的なお守りにもなるよ」と勧められました。
半信半疑で、標準的な「5mm厚」のニースリーブを購入。
履いてみると、膝周りが「キュッ」と適度に圧迫され、温かい。
そして、スクワットをしてみると…不思議なことに、あの「怖い」という感覚がかなり和らいでいました。
膝がしっかりとサポートされ、「守られている」という安心感。
その日は、恐怖心なくスムーズに深くしゃがむことができ、自己ベストタイの重量を余裕を持ってクリアできたのです。
スリーブは、僕の膝だけでなく、「心」も守ってくれるギアでした。
あなたは必要?スリーブ導入を検討すべき「3つのサイン」

スリーブは全員に必須のギアではありません。
しかし、以下のようなサインを感じ始めたら、導入を検討する価値は十分にあります。
サイン①:スクワットやプレス系で膝・肘に軽い違和感や不安がある
「痛み」というほどではないけれど、特定の動作で膝や肘に「ポキポキ」音が鳴ったり、「ズキッ」とした軽い痛みを感じたり、なんとなく「不安定」な感覚がある。
これは、関節周りの組織に負担がかかり始めているサインかもしれません。
スリーブによる保温と圧迫が、これらの不快感を軽減し、悪化を防ぐ助けになる可能性があります。
サイン②:高重量(自己ベスト付近)に挑戦する頻度が増えてきた
あなたがトレーニングのレベルアップを目指し、限界に近い重量に頻繁に挑戦するようになったら、それは関節への負荷も増大していることを意味します。
スリーブは、その高負荷トレーニングを安全に行うための「保険」として、またパフォーマンスを最大限に引き出すための「ブースター」として機能します。
サイン③:関節の安定性を高め、より質の高いフォームを目指したい
固有受容覚の向上効果により、スリーブはフォームの安定性と精度を高める助けになります。
「スクワットでもっと深くしゃがみたい」「ベンチプレスでブレをなくしたい」といった、より質の高いトレーニングを追求する段階に入ったら、スリーブはその目標達成をサポートしてくれるでしょう。
【最重要】失敗しない!スリーブの「選び方」徹底ガイド

スリーブの効果は、選び方、特に「厚さ」と「サイズ」で大きく変わります。
ここでの選択ミスは、効果がないどころか、不快感の原因にもなります。
① 素材:主流は「ネオプレン」。保温性と伸縮性
ほとんどのスリーブは、「ネオプレン」(ウェットスーツなどにも使われる合成ゴム素材)で作られています。
保温性、伸縮性、耐久性に優れており、トレーニングギアとして最適な素材です。
製品によって品質に差はありますが、基本的にはこの素材を選べば間違いありません。
② 「厚さ」が効果を左右する(3mm / 5mm / 7mm)
これが最も重要な選択ポイントです。
ネオプレンの「厚さ」によって、保温性、圧迫力(サポート力)、そして価格が変わってきます。
・3mm厚:最も薄く、柔軟性が高い。
保温効果はマイルド。
軽いサポート感で動きやすいため、クロスフィットや長時間のトレーニング向け。
・5mm厚:バランスが取れた厚さ。
適度な保温性とサポート力を提供。
一般的な筋力トレーニング、初心者〜中級者に最もおすすめ。
・7mm厚:最も厚く、サポート力が最強。
関節をガッチリと固定する感覚。
スクワットやベンチプレスで高重量を扱うパワーリフターや、最大限の安定感を求める上級者向け。
動きやすさはやや犠牲になる。
結論:迷ったら、まずは「5mm厚」を選ぶのが最も汎用性が高く、失敗が少ないでしょう。
③ 【最難関】「サイズ」選び。最適な圧迫感の見つけ方(計測必須)
サイズ選びは非常に難しく、失敗が多いポイントです。
・計測:必ず、メーカーが指定する方法で、自分の膝周りや肘周りの「サイズ(周囲長)」をメジャーで正確に計測してください。
(例:膝の場合、膝の中心から10cm下のふくらはぎ周り、など)
・サイズ表との照合:計測値とメーカーのサイズ表を照らし合わせ、適切なサイズを選びます。
・最適な圧迫感:スリーブは「かなりキツめ」が基本です。
履く(装着する)のに少し苦労するくらいで、装着後に「しっかりと圧迫されている」感覚があるのが理想。
緩すぎるとサポート効果が得られません。
かといって、血流が止まるほどキツすぎるのはNGです。
サイズ選びで迷った場合は、「小さい方」を選ぶのがセオリーですが、レビューなども参考に慎重に判断しましょう。
④ 初心者〜中級者におすすめの「最初の1枚」は?
以上の点を踏まえ、初心者〜中級者が最初に買うべきスリーブは…
「5mm厚」で、「自分のサイズに合った、ややキツめのもの」となります。
有名ブランド(SBD、Rehbandなど)は高品質ですが高価なので、最初は中価格帯(3,000円〜5,000円程度)の信頼できるメーカーのものから試してみるのが良いでしょう。
効果を引き出す!スリーブの「正しい使い方」と「ケア方法」

せっかく買ったスリーブも、使い方や手入れが悪いと効果が半減し、寿命も縮みます。
① 正しい装着方法(特にニースリーブ)
ニースリーブは履くのが大変です。
・スリーブの上端を半分ほど折り返し、足を通します。
・ふくらはぎの一番太い部分を通過させ、膝の下あたりまで引き上げます。
・折り返した部分を元に戻し、膝のお皿がスリーブの中央に来るように位置を調整します。
シワが寄らないように、均等に引き上げるのがコツです。
② 使うタイミング:ウォーミングアップから?メインセットだけ?
これは目的や好みによりますが、一般的には…
・ウォーミングアップから装着:関節を早期に温め、全体の安定感を高めたい場合。
・メインセット(高重量セット)の直前に装着:最大のサポート効果を、最も重要なセットで得たい場合。
軽い重量のセットでは外しておき、関節自身の力を使うことも重要です。
③ 洗濯と乾燥:臭いを防ぎ、長持ちさせるコツ
ネオプレン素材は汗を吸いやすく、臭いが発生しやすいです。
・洗濯:洗濯機ではなく、「手洗い」(中性洗剤を使用し、ぬるま湯で優しく押し洗い)が基本です。
・乾燥:乾燥機は絶対にNG。
タオルで水分を吸い取り、「裏返して」「陰干し」で完全に乾かします。
直射日光は素材を劣化させます。
定期的な洗濯と乾燥が、臭いを防ぎ、スリーブを長持ちさせる秘訣です。
サイズ選びで大失敗…キツすぎて血が止まった
僕は、ニースリーブを選ぶ際、「キツめが良い」という情報を鵜呑みにし、自分の計測値よりもワンサイズ小さい「XSサイズ」をネットで注文しました。
届いたスリーブを履こうとすると…入らない!
汗だくになりながら、10分以上格闘して、ようやく膝まで引き上げました。
しかし、その圧迫感は尋常ではありませんでした。
膝が紫色になり、ジンジンと痺れてくる。
「これは…ヤバい」。
慌てて脱ごうとしましたが、今度は脱ぐのにも一苦労。
完全にサイズ選択を間違えたのです。
「キツめが良い」にも限度がある。
メーカーのサイズ表を信じ、自分の計測値を正確に測ることの重要性を、僕は痛感しました。
(結局、Sサイズを買い直しました…)
スリーブに関するよくあるQ&A

最後に、スリーブに関する疑問にお答えします。
Q1. 常に使っていると関節が弱くなる?
A1. 可能性はゼロではありませんが、使い方次第です。
軽い重量のセットでも常にスリーブに頼り、関節自身の安定性を高める努力(フォーム改善や周辺筋の強化)を怠れば、依存してしまう可能性はあります。
スリーブはあくまで「補助」と考え、必要な場面(高重量セット)でのみ使用し、スリーブなしでも安定した動作ができるようにトレーニングすることが理想です。
Q2. 痛みがある時に使ってもいい?(※注意喚起)
A2. 軽い違和感程度ならOKな場合もありますが、強い痛みがある場合はNGです。
前述の通り、スリーブは怪我を治すものではありません。
痛みをスリーブで誤魔化してトレーニングを続けると、根本的な原因が悪化し、取り返しのつかない怪我に繋がる可能性があります。
強い痛みがある場合は、まず医師の診察を受けてください。
Q3. 高価なブランド品と安価なものの違いは?
A3. 主に「素材の品質(耐久性、フィット感)」と「縫製の丁寧さ」が違います。
SBDやRehbandなどの有名ブランド品は、長年の研究に基づいて設計されており、サポート力、耐久性、フィット感において高い評価を得ています。
安価なものは、すぐに伸びてしまったり、縫製がほつれたりする可能性があります。
長く使うことを考えれば、信頼できるブランドの製品を選ぶ価値は十分にあります。
まとめ:スリーブを賢く活用し、安全でパワフルなトレーニングを

ニースリーブとエルボースリーブは、あなたの関節を保護し、トレーニングの質を高め、そして安心感を与えてくれる、非常に有効なギアです。
しかし、それは「正しい選び方」と「適切な使い方」ができて初めて得られる効果です。
最後に、重要なポイントをまとめます。
- 目的:「保温」「圧迫」「固有受容覚向上」で、関節をサポートしパフォーマンスを高める(サポーターとは違う)。
- 必要性:関節に違和感・不安がある、高重量に挑戦する、フォームを安定させたい場合に検討。
- 選び方:厚さは「5mm」が万能。
サイズは「必ず計測」し、「ややキツめ」を選ぶ。 - 使い方:高重量セットで使い、セット間は緩める。
手洗いでケアする。 - 注意点:怪我を治すものではない。
強い痛みがある場合は使用しない。
スリーブは、あなたのトレーニングキャリアを長く、健康に続けるための「投資」です。
関節からのサインに耳を傾け、必要だと感じたら、ぜひこの賢いギアを活用してみてください。




