「夜ご飯に白米食べたら太るから抜いてるんだよね…」
「トレ後は30分以内にプロテイン飲まないと筋肉つかないって聞いたから、いつもダッシュで飲んでる!」
「減量中だから、とにかく脂質はゼロにしないと!ナッツとか絶対NG!」
筋トレを始めると、多くの人が熱心に栄養に関する情報を集め始めます。
しかし、インターネットやSNSに溢れる玉石混交の情報の中から「正しい知識」を見つけ出すのは至難の業。
気づかぬうちに、科学的根拠の乏しい「食事の迷信(神話)」を信じ込み、良かれと思ってやっていることが、実はあなたの筋肉の成長を妨げている…そんな悲劇が、後を絶ちません。
「頑張っているのに、なぜか筋肉がつかない…」
その原因は、あなたのトレーニング不足や才能のせいではなく、もしかしたら、あなたが信じている「食事の常識」そのものが間違っているのかもしれません。
この記事では、多くの筋トレ民を惑わせ、効果的な体づくりを邪魔している代表的な「食事の迷信」ワースト5を取り上げ、最新の科学的知見に基づいて、その「嘘」と「ホント」を徹底的に斬っていきます!
この記事でわかること
- なぜ筋トレに関する「食事の迷信」が生まれやすいのか、その背景
- 多くのトレーニーが信じがちな「食事の迷信」ワースト5とその科学的な真実
- 情報に惑わされず、効果的な食事管理を行うための基本的な考え方
なぜ筋トレ界隈には「栄養の神話」が溢れているのか?

具体的な迷信に入る前に、なぜこれほどまでに多くの誤解が生まれやすいのか、その背景を理解しておきましょう。
① 情報過多と科学的根拠の欠如
インターネットやSNSの普及により、誰もが簡単に情報を発信できるようになりました。
しかし、その中には個人的な経験に基づいただけの意見や、科学的根拠の乏しい情報、あるいは意図的に誤解を招くような情報(例:誇大広告)も大量に含まれています。
玉石混交の情報の中から、正しい情報を見抜くリテラシーが求められます。
② 「個人の体験談」の一般化
「〇〇さんが、この方法で痩せたと言っていた!」
特定の個人にとって有効だった方法が、必ずしも他の人にも当てはまるとは限りません。
体質、運動歴、ライフスタイルなど、条件は人それぞれ異なります。
「個人の体験談」は参考にはなりますが、それを鵜呑みにして一般化するのは危険です。
③ サプリメント業界のマーケティング
サプリメントの販売促進のために、特定の成分の効果を過剰に強調したり、不安を煽ったりするマーケティング戦略も存在します。
(例:「〇〇を飲まないと筋肉がつかない!」)
科学的根拠(エビデンス)レベルを冷静に見極める必要があります。
【神話①】「夜に炭水化物を食べると太る」は本当か?

これは、おそらく最も広く信じられている迷信の一つでしょう。
「夜は活動量が少ないから、食べた炭水化物が脂肪になりやすい」という理屈です。
重要なのは「1日の総摂取カロリー」
結論から言えば、これはほぼ嘘です。
太るか痩せるかを最終的に決めるのは、「いつ食べるか」よりも「1日トータルでどれだけのカロリーを摂取し、どれだけ消費したか」というエネルギー収支です。
たとえ夜に炭水化物を食べたとしても、1日の総摂取カロリーが消費カロリーを下回っていれば(アンダーカロリー)、体脂肪が増えることはありません。
逆に、朝や昼にどれだけヘルシーな食事をしても、夜にドカ食いして総カロリーがオーバーすれば太ります。
トレーニング後の炭水化物の重要性
むしろ、夜にトレーニングを行う人にとっては、トレーニング後の夕食で炭水化物をしっかり摂取することは、筋肉の回復(筋グリコーゲンの補充)のために非常に重要です。
ここで炭水化物を抜いてしまうと、回復が遅れ、翌日のパフォーマンス低下や筋肉の分解に繋がる可能性があります。
結論:夜でも適量なら問題なし、むしろ戦略的に活用
夜だからといって、過度に炭水化物を恐れる必要はありません。
重要なのは、1日の総カロリーとPFCバランスの範囲内で、自分の活動量やトレーニング時間に合わせて「適量」を摂取することです。
特にトレ後の栄養補給としては、積極的に活用すべきです。
(もちろん、寝る直前の大量摂取は睡眠の質を下げるので避けましょう)
【神話②】「脂質はとにかくカットすべき悪者」なのか?

「脂質=太る」のイメージから、減量中は特に脂質を目の敵にし、徹底的にカットしようとする人がいます。
脂質の重要な役割(ホルモン生成、細胞膜)再確認
これも大きな間違いです。(別記事「筋トレと脂質」で詳述)
脂質は、筋肉の成長に関わるテストステロンなどのホルモンの材料であり、細胞膜の構成成分でもあります。
また、脂溶性ビタミンの吸収にも不可欠。
極端な脂質制限は、ホルモンバランスの乱れ、肌荒れ、エネルギー不足、トレーニング意欲の低下などを招き、健康を害するだけでなく、筋トレの効果も低下させます。
「良い脂質」と「悪い脂質」の違い
重要なのは「量」だけでなく「質」です。
・積極的に摂りたい「良い脂質」:不飽和脂肪酸(特にオメガ3)。
青魚、亜麻仁油、えごま油、ナッツ類、アボカドなど。
・避けるべき「悪い脂質」:トランス脂肪酸。
マーガリン、ショートニング、菓子パン、揚げ物など。
飽和脂肪酸(肉の脂身、バターなど)も摂りすぎに注意。
結論:質を選び、適量を摂取することが鍵
脂質を完全にカットするのではなく、総カロリーの20〜30%を目安に、「良い脂質」を選んで適量摂取する。
これが、健康的で効果的な体づくりのための正しい脂質との付き合い方です。
【神話③】「プロテインはトレーニング直後30分以内に飲まないと意味がない」?

「ゴールデンタイム神話」とも呼ばれる、非常に根強い迷信です。
トレーニング直後の30分〜1時間は、確かに筋肉が栄養を取り込みやすい状態にありますが、それを逃したら全てが無駄になる、というのは誇張です。
「アナボリックウィンドウ」の真実
筋肉の合成(アナボリック)が高まる時間は、トレーニング直後の短時間だけでなく、実際にはトレーニング後24時間〜48時間程度は続いていると考えられています。
この「アナボリックウィンドウ(筋肉がつきやすい時間帯)」は、従来考えられていたよりもずっと「広い」のです。
より重要なのは「1日の総タンパク質量」と「均等な摂取」
もちろん、トレーニング後に速やかにタンパク質を補給することは、回復を早める上で有効です。
しかし、それ以上に重要なのは、1日を通して、筋肉の材料となる「総タンパク質量」(体重×1.6g〜2.2g目安)を確実に摂取すること、そしてそれを数回に分けて均等に摂取し、血中アミノ酸濃度を安定させることです。
結論:直後も有効だが、数時間以内ならOK。 焦る必要なし
トレーニング直後にプロテインを飲むことは良い習慣ですが、「30分以内」に異常にこだわる必要はありません。
ジムから帰宅して、シャワーを浴びて、それから飲んでも十分に効果は期待できます。
焦って飲むよりも、1日のトータル摂取量を確実に満たすことの方が、はるかに重要です。
「30分以内」の呪縛に囚われていた僕
僕は、「ゴールデンタイムは30分!」という言葉を信じ込み、トレーニングが終わった瞬間から、まるで時限爆弾を抱えているかのように焦っていました。
ロッカーまでダッシュし、シェイカーを準備し、息を切らしながらプロテインを一気飲み。
少しでも30分を過ぎようものなら、「ああ、今日のトレーニングが無駄になった…」と本気で落ち込んでいました。
ある日、ジムでプロテインをゆっくり飲んでいる上級者の方に、「30分過ぎちゃいますよ!」と余計な心配をしてしまいました。
すると彼は笑って、「大丈夫だよ。
そんなに焦らなくても、筋肉は逃げないから。
それより、1日のトータルでちゃんとタンパク質摂ってる?そっちの方が大事だよ」と教えてくれました。
僕は衝撃を受けました。
ずっと「30分」という時間に縛られ、本来楽しむべきトレーニング後の達成感を、焦りで台無しにしていたのです。
その日から、僕は時間を気にせず、自分のペースでプロテインを飲むようになりました。
もちろん、トレーニング効果が落ちることはありませんでした。
あの「呪縛」から解放され、心に余裕が生まれました。
【神話④】「サプリメントを飲めば飲むほど筋肉がつく」?

プロテイン、BCAA、EAA、クレアチン、HMB、グルタミン…。
世の中には無数のサプリメントが存在し、「これを飲めば筋肉がつく!」と謳われています。
サプリメントはあくまで「補助」。 基本は「食事」
まず大前提として、サプリメントは魔法の薬ではありません。
それだけで筋肉がモリモリつくことは絶対にありません。
筋肉を作る土台は、あくまで「適切なトレーニング」と「バランスの取れた食事」です。
サプリメントは、その土台が完璧にできていて、それでも足りない部分を「補助」するため、あるいは特定の目的(パフォーマンス向上など)のために「プラスアルファ」として使うものです。
効果が証明されているサプリはごく一部
そして、数あるサプリメントの中で、科学的に明確な効果が証明されているものは、実はごく一部です。
「プロテイン」「クレアチン」はその代表格。
「カフェイン」「βアラニン」などもパフォーマンス向上効果が期待できます。
しかし、それ以外の多くのサプリメントは、効果が限定的であったり、まだ研究途上であったり、あるいはプラシーボ(思い込み)効果に過ぎない可能性もあります。
結論:基本の食事を完璧にしてから、必要最低限を検討
高価なサプリメントに手を出す前に、まずは日々の「食事」を見直しましょう。
PFCバランスは適切か?ビタミン・ミネラルは足りているか?
その上で、本当に必要だと判断した場合にのみ、「プロテイン」や「クレアチン」といった、実績のある基本的なサプリメントから導入を検討するのが賢明です。
「飲むだけで痩せる・筋肉がつく」という甘い言葉には、絶対に騙されてはいけません。
【神話⑤】「とにかく量を食べれば筋肉はデカくなる」?

特に体を大きくしたい(増量したい)初心者が陥りがちな誤解です。
「筋肉をつけるにはオーバーカロリーが必要だ!」と、ジャンクフードも含めて、とにかく大量に食べる「ダーティバルク」を実践しようとする人がいます。
カロリー過剰摂取のリスク(体脂肪の増加)
確かに、筋肉を増やすためには、消費カロリーを上回るカロリー(オーバーカロリー)が必要です。
しかし、必要以上にカロリーを摂りすぎても、筋肉の合成スピードには限界があります。
余ったカロリーは、当然ながら「体脂肪」として蓄積されます。
筋肉と一緒に、大量の脂肪までつけてしまっては、後でそれを落とすのに大変な苦労が伴います。
PFCバランスと「質」の重要性
また、「量」だけでなく、その「質」も重要です。
オーバーカロリーを達成していても、タンパク質が不足していたり、質の悪い脂質や糖質ばかりを摂取していたりすれば、効率的な筋肥大は望めません。
PFCバランスを意識し、できるだけクリーンな食品からカロリーを摂取することが重要です。
結論:「ダーティバルク」より「リーンバルク」を目指すべき
筋肉の増加を最大化しつつ、体脂肪の増加を最小限に抑える「リーンバルク」を目指しましょう。
具体的には、「消費カロリー + 300〜500kcal」程度の適切なオーバーカロリーを設定し、高タンパク質・中炭水化物・良質な脂質を心がけることが、最も効率的で健康的な増量方法です。
(「とにかく食べればデカくなる」は幻想です)
「ダーティバルク」で得たもの、失ったもの
僕は、細身の体型を変えたくて、「とにかく食え!」というネットの情報を信じ、「ダーティバルク」を始めました。
毎食ご飯は大盛り、間食には菓子パンとプロテイン、夜食にカップラーメン…。
トレーニングもハードに行いました。
確かに、体重は面白いように増えました。
3ヶ月で10kg増。
扱える重量も伸び、力もついた実感がありました。
しかし、鏡に映る自分の姿は、理想とは程遠いものでした。
筋肉もついたかもしれませんが、それ以上にお腹周りを中心に大量の「脂肪」がついていたのです。
服のサイズは上がり、動きは鈍くなり、健康診断の数値も悪化。
僕は、「デカくなる」ことと「太る」ことを混同していたのです。
結局、その脂肪を落とすために、僕は辛い減量期間を過ごすことになりました。
あの時、「量」だけでなく「質」と「適切なカロリー」を意識していれば…と後悔しています。
まとめ:情報に惑わされず、科学的根拠に基づいた食事を

筋トレに関する栄養情報は、日々更新され、時には正反対の説が登場することもあります。
大切なのは、一つの情報や「〇〇さんが言っていた」という体験談を鵜呑みにせず、できるだけ科学的根拠(エビデンス)に基づいた、信頼できる情報源にあたること。
そして、最終的には「自分の体で試してみて、どう感じるか」という実践と検証を繰り返すことです。
今回斬ってきた「食事の迷信」を、もう一度確認しましょう。
- 夜の炭水化物:太る直接原因ではない。
1日の総カロリー次第。
トレ後はむしろ重要。 - 脂質カット:悪ではない。
「質」を選び「適量」摂ることが必須。 - プロテイン30分以内:焦る必要なし。
1日の総量と均等摂取がより重要。 - サプリ万能説:基本は「食事」。
サプリはあくまで補助。 - とにかく食べればデカくなる:脂肪が増えるだけ。
「リーンバルク」を目指す。
これらの誤解から解放されれば、あなたの食事管理はもっとシンプルに、もっと効果的になるはずです。




