「ジムで履く靴って、ランニングシューズじゃダメなの?何が違うの?」
「スクワットで深くしゃがめないんだけど、もしかして靴が原因…?」
「上級者が履いてる踵が高い靴…リフティングシューズって言うんだっけ?あれって本当に効果あるの?自分にも必要?」
ジムでのトレーニング、特にスクワットやデッドリフトといったBIG3に取り組む上で、あなたが最も軽視しがちで、しかし最も重要な「土台」となるのが「シューズ(靴)」です。
多くの初心者は、「動きやすければ何でもいい」と、手持ちのランニングシューズでトレーニングを始めてしまいます。
しかし、それはあなたのパフォーマンスを低下させ、怪我のリスクを高める、非常に危険な選択なのです。
そして、トレーニングに慣れてくると気になるのが、踵(かかと)が高くなった特殊な形状の「リフティングシューズ」。
「あれを履くとスクワットが劇的に変わる」という噂を聞いたことがあるかもしれません。
それは本当なのでしょうか?
どんな人に必要で、普通のトレーニングシューズとは何が違うのでしょうか?
この記事では、筋トレにおける「シューズ選び」の重要性から、リフティングシューズとフラットソールシューズの明確な違い、それぞれの驚くべき効果、そしてあなたの目的やレベルに合わせた「失敗しない選び方」まで、徹底的に解説します。
この記事でわかること
- なぜ筋トレ(特にスクワット等)でランニングシューズがNGなのか
- リフティングシューズ(踵高)とフラットソールシューズの明確な違いと効果
- あなたにリフティングシューズが必要かどうかの判断基準と、失敗しない選び方
なぜ筋トレ(特にBIG3)で「シューズ選び」が超重要なのか?

ウェアやグローブと違い、シューズはあなたの体と「地面」を繋ぐ唯一の接点です。
この接点が不安定だと、全ての動作に悪影響が出ます。
① 「安定した土台」が全ての基本
スクワットやデッドリフトで高重量を扱う際、足元がグラグラしていたらどうなるでしょう?
バランスを崩しやすくなり、フォームが乱れ、狙った筋肉に効かせられないだけでなく、膝や足首、腰を痛める怪我のリスクが劇的に高まります。
硬く、フラットなソールで地面をしっかりと捉え、「安定した土台」を作ることが、安全かつ効果的なトレーニングの大前提なのです。
② 「パワーの伝達効率」が変わる
あなたが地面を蹴って生み出したパワーは、「足裏→シューズ→床」へと伝わり、その反作用としてバーベルを持ち上げます。
もしシューズのソールが柔らかくフニャフニャだったら、せっかく生み出したパワーがソールに吸収されてしまい、効率よくバーベルに伝わりません。
硬いソールは、パワーの伝達ロスを最小限に抑え、あなたの持てる力を最大限に引き出してくれます。
③ 【再確認】なぜ「ランニングシューズ」は絶対にNGなのか?
もうお分かりですね。
ランニングシューズは「走る衝撃」を吸収するために、ソールが厚く、柔らかく、そして多くの場合不安定な形状(例:エアクッション)をしています。
これは、筋トレ(特に高重量を垂直方向に挙上する動作)とは真逆の特性です。
ランニングシューズでスクワットを行うのは、砂浜の上で重い荷物を持ち上げようとするようなもの。
絶対に避けましょう。
タイプ別・筋トレシューズの「効果」と「使い分け」

筋トレに適したシューズは、大きく分けて2つのタイプがあります。
それぞれの特徴と得意分野を知り、使い分けることが重要です。
① フラットソールシューズ(基本の万能型)
特徴:靴底が「平ら(フラット)」で「硬い」シューズ。
踵(かかと)の高さがない、または非常に低い。
効果:地面をしっかりと捉え、足裏全体で力を伝えやすい。
安定性が高く、あらゆる種目に対応できる。
得意な種目:デッドリフト、ベンチプレス、その他全てのマシントレーニングやダンベルトレーニング。
代表例:コンバース(オールスター)、VANS、トレーニング専用フラットシューズ(Nike Metconの一部モデルなど)、レスリングシューズ、足袋など。
結論として、まず全てのトレーニーが最初に持つべき「基本の1足」です。
② リフティングシューズ(踵高・スクワット特化型)
特徴:靴底が硬く安定している点はフラットソールと同じですが、踵(かかと)部分が1.5cm〜2.5cm程度高くなっている特殊な形状。
足首周りのホールド感も非常に高い。
効果:踵が高くなることで、スクワットなどのしゃがみ込む動作がスムーズになり、より深く、より安定して行えるようになる。
得意な種目:スクワット(特にハイバー、フロント)、ウエイトリフティング種目(スナッチ、クリーン&ジャーク)、ショルダープレスなど。
代表例:Nike Romaleos、Adidas Adipower、Reebok Legacy Lifterなど。
スクワットのパフォーマンスを本気で向上させたい人向けの「特化型シューズ」です。
【深掘り】リフティングシューズ(踵高)の驚くべき効果

なぜ踵が高いだけで、スクワットが劇的に変わるのでしょうか?
その秘密は「足首」にあります。
踵が高いと「なぜ」スクワットが深くしゃがめるのか?(足首の柔軟性補助)
スクワットで深くしゃがむためには、「足首」が柔らかく曲がる(背屈する)必要があります。
しかし、足首が硬い人は、深くしゃがもうとすると踵が浮いてしまったり、代償動作として腰が丸まってしまったりします。
リフティングシューズは、踵を高くすることで、擬似的に「足首の柔軟性」を作り出し、足首が硬い人でもスムーズに深くしゃがみ込めるようにサポートしてくれるのです。
まるで魔法のように、可動域が広がります。
体幹の前傾を防ぎ、腰への負担を軽減する
深くしゃがめない人が無理にボトムポジションを作ろうとすると、上半身が過度に前に倒れ込み(前傾し)、腰に大きな負担がかかります。
リフティングシューズで深く、かつ上体を立てたフォームでしゃがめるようになると、腰への負担が軽減され、より安全に高重量を扱えるようになります。
特に、バーを首の後ろの高い位置で担ぐ「ハイバースクワット」や、体の前面で担ぐ「フロントスクワット」で効果を発揮します。
地面反力を最大限に活かし、挙上重量UPへ
硬く安定したソールと、踵の高さによる適切なフォームは、あなたが地面を蹴る力(地面反力)をロスなくバーベルに伝えることを可能にします。
足元が安定し、全身の力が効率よく伝わることで、結果的に扱える重量(MAX重量)の向上に繋がるのです。
足首ガチガチだった僕が「フルスクワット」できた日
僕は、昔から足首が異常に硬く、和式トイレで踵をつけてしゃがむことができませんでした。
当然、スクワットも苦手。
どんなに頑張っても、太ももが床と平行になる「パラレル」までしかしゃがめず、それ以上深くしようとすると踵が浮いて腰が丸まってしまいました。
「スクワットは向いてないんだ…」と諦めていました。
そんな時、ジムのトレーナーに「足首が硬い人こそ、リフティングシューズを試すべきですよ」と勧められました。
高価でしたが、藁にもすがる思いで購入。
初めて履いてスクワットをしてみると…「え!?しゃがめる!」。
自分でも信じられないくらいスムーズに、深く。
踵がしっかりと地面についたまま、お尻が踵につくかのような「フルスクワット」が、いとも簡単にできたのです。
まるで足首にバネが付いたような感覚。
シューズが、僕の「弱点」を「強み」に変えてくれました。
あの感動は忘れられません。
リフティングシューズは「どんな人」に「いつ」必要か?

リフティングシューズは魔法の靴ですが、全ての人に必須というわけではありません。
購入を検討すべきタイミングと、注意点です。
スクワットで深くしゃがめない(足首が硬い)人
これが最も分かりやすい判断基準です。
踵が浮いてしまう、どうしてもパラレル以下にしゃがめない、という人は、リフティングシューズの恩恵を最も受けられます。
足首のストレッチも重要ですが、シューズで補助することで、すぐに正しいフォームでのトレーニングが可能になります。
高重量のスクワット(ハイバー、フロント)に挑戦する人
バーベルスクワット(特にハイバー、フロント)で、自分の体重以上の高重量を扱うようになってきたら、怪我予防とパフォーマンス向上のために導入を強く推奨します。
安定性が格段に向上し、より安全に限界に挑戦できるようになります。
ウエイトリフティング競技を行う人
スナッチやクリーン&ジャークといったウエイトリフティング種目では、深くしゃがみ込む動作と爆発的な挙上が求められるため、リフティングシューズは必須のギアとなります。
デッドリフトには不向き?その理由
リフティングシューズは、スクワットには最適ですが、デッドリフトには不向きとされています。
理由は後述しますが、踵が高いことで重心が前に移動し、バーを引き上げる軌道が非効率になるためです。
デッドリフトの日は、フラットソールシューズに履き替えるのが一般的です。
デッドリフトに最適なのは「フラットソール」一択

では、デッドリフトにはどんなシューズが良いのでしょうか?
なぜデッドリフトでは踵(かかと)の高さが邪魔になるのか?
デッドリフトは、床からバーベルを引き上げる種目です。
踵が高いと、体がわずかに前傾し、重心が前方に移動します。
これにより、バーベルを引き上げる軌道が長くなり、腰への負担が増加する可能性があります。
また、地面をしっかりと「押す」感覚も掴みにくくなります。
デッドリフトにおいては、地面との距離を最短にし、足裏全体で床を捉えられる「フラットソール」が最も効率的なのです。
コンバース、VANS、足袋…デッドリフターが愛用するシューズ
そのため、多くのデッドリフターは、高価な専用シューズではなく、安価で入手しやすい「フラット」で「ソールが薄く硬い」シューズを愛用しています。
・コンバース(オールスター):定番中の定番。
安価で、ソールが薄く硬い。
・VANS:スケートシューズもソールがフラットで硬く、グリップ力も高い。
・レスリングシューズ/ボクシングシューズ:ソールが薄く、足首のホールド感も高い。
・足袋(たび):究極の薄さとグリップ力。
裸足に近い感覚。
・デッドリフト専用シューズ:ソールが非常に薄く、滑り止め加工が施された専用品も存在する。
失敗しない!「リフティングシューズ」の選び方 4つのポイント

リフティングシューズは高価な買い物です。
失敗しないための選び方のポイントです。
① ヒール(踵)の高さ:標準(0.75インチ)と低め
踵の高さは、製品によって異なります。
・標準的な高さ:約0.75インチ(約1.9cm)。
Nike RomaleosやAdidas Adipowerなどがこれにあたります。
多くの人にとって、十分な効果を発揮します。
・低めの高さ:約0.6インチ(約1.5cm)。
Adidas Powerliftなど。
標準的な高さでは高すぎると感じる人や、デッドリフトなど他の種目にもある程度流用したい人向け。
結論:迷ったら、まずは「標準的な高さ(0.75インチ)」を選ぶのがおすすめです。
② ソールの硬さと安定性:フニャフニャはNG
リフティングシューズの命は「ソール」の硬さです。
高重量を支えるため、木材や高密度のTPU(熱可塑性ポリウレタン)などで作られており、全くと言っていいほど曲がりません。
試着した際に、ソールが柔らかく感じたり、グラつきを感じたりするものは避けましょう。
③ アッパー(甲)の素材とフィット感:ブレないホールド力
アッパー(甲の部分)は、足をしっかりとホールドし、シューズの中で足がズレないように設計されています。
革や合成皮革、メッシュ素材などがありますが、重要なのはフィット感。
ストラップ(ベルクロ)が付いているモデルが多く、これでさらにホールド感を高められます。
④ サイズ感:ジャストフィットが基本(捨て寸不要)
ランニングシューズのように「つま先に余裕(捨て寸)を持たせる」必要はありません。
むしろ、シューズの中で足が動かないよう、「ジャストフィット」のサイズを選ぶのが基本です。
ただし、窮屈すぎると力が入りません。
必ず試着し、足幅なども含めて、痛みなくピッタリとフィットするものを選びましょう。
デッドリフトで気付いた「フラット」の重要性
リフティングシューズを手に入れ、スクワットが劇的に改善した僕は、調子に乗ってそのままデッドリフトも行っていました。
しかし、どうもしっくりこない。
バーを引き上げる時に、重心が前に流れるような感覚があり、腰への負担も大きい気がする。
ある日、ジムでデッドリフト専用の薄いシューズ(あるいは裸足)で軽々と200kg以上を引いている人を見かけ、「なぜ踵の高い靴を履かないんですか?」と尋ねてみました。
すると彼は、「デッドリフトは地面を押す種目だからね。
踵が高いと、その分バーを余計に引き上げないといけないし、重心が前にズレて腰に悪いんだよ」と教えてくれました。
衝撃でした。
僕は、スクワットの常識を、そのままデッドリフトに当てはめていたのです。
翌日、僕は家にあった古いコンバースを引っ張り出し、デッドリフトに挑戦。
すると、足裏全体で床を捉え、地面を力強く「押す」感覚が明確に分かりました。
重心も安定し、腰への不安も軽減。
種目によって最適なシューズは違う。
道具の特性を理解することの重要性を痛感しました。
まとめ:「足元」を見直し、トレーニングを次のレベルへ

シューズは、あなたの体と地面を繋ぐ、最も重要なインターフェースです。
この「土台」をおろそかにしていては、どんなに素晴らしいトレーニング理論も、その効果を最大限に発揮することはできません。
最後に、シューズ選びのポイントをまとめます。
- ランニングシューズは絶対にNG。
柔らかく不安定なソールは怪我の元。 - 基本は「フラットソール」。
デッドリフトや一般的な筋トレにはこれが万能。 - 「リフティングシューズ(踵高)」はスクワットの秘密兵器。
足首が硬い人、高重量スクワットに挑む人は導入する価値大。 - リフティングシューズを選ぶ際は、「踵の高さ」「ソールの硬さ」「フィット感」をチェック。
もしあなたがスクワットで伸び悩んでいたり、より安全に高重量に挑戦したいと考えているなら、「リフティングシューズ」への投資は、あなたのトレーニングを確実に次のレベルへと引き上げてくれるはずです。




