「減量中だから、脂質はとにかくカットしなきゃ!アボカドとかナッツもダメだよね…?」
「脂質って、結局全部カロリー高いし、体脂肪になるだけでしょ?筋肉には関係ないんじゃない?」
「『良い脂質』とか『悪い脂質』とか聞くけど、具体的に何がどう違うのか、さっぱり分からない…」
筋トレやダイエットを始めると、多くの人が真っ先に「敵」と見なしがちな栄養素、それが「脂質」です。
1gあたり9kcalという高いカロリーから、「脂質=太る」「健康に悪い」というネガティブなイメージが先行し、極端に避けようとする人も少なくありません。
しかし、その考えは大きな間違いです。
実は、脂質は私たちの体にとって不可欠なエネルギー源であるだけでなく、ホルモンの材料となり、細胞の機能を維持し、そして筋肉の成長にも深く関わる、極めて重要な栄養素なのです。
問題なのは「脂質」そのものではなく、その「種類」と「摂取量」を知らずに、闇雲にカットしてしまうこと。
この記事では、「脂質=悪」という古い常識を覆し、なぜトレーニーにとって脂質が必要なのか、避けるべき「悪い脂質」と積極的に摂るべき「良い脂質」(特にオメガ3)の明確な違い、そしてあなたの目的(増量/減量)に合わせた正しい摂り方まで、科学的根拠に基づいて徹底解説します。
もう脂質を恐れる必要はありません。
この記事でわかること
- なぜ筋トレ民にとって脂質が不可欠なのか、その重要な4つの役割
- 飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(オメガ3, 6, 9)、トランス脂肪酸の明確な違い
- 筋肉を育て、健康をサポートする「良い脂質」の具体的な食品と正しい摂り方
- なぜトレーニーは「脂質」を恐れる必要がないのか?(むしろ必須!)
- 知らなきゃ損!脂質の「種類」を完全理解する
- トレーニーが「特に」注目すべき脂質:オメガ3 & オメガ6
- 目的別(増量/減量)!脂質の「適切な摂取量」は?
- 今日から実践!「良い脂質」を食事に取り入れる具体策
- これはNG!トレーニーが避けるべき「脂質の摂り方」
- まとめ:「良い脂質」を味方につけ、健康的でパワフルな体へ
なぜトレーニーは「脂質」を恐れる必要がないのか?(むしろ必須!)

炭水化物やタンパク質に比べて悪者にされがちな脂質ですが、体内で非常に重要な役割を担っています。
特にトレーニーにとっては、無視できない存在です。
① ホルモン(特にテストステロン)生成の「材料」である
筋肉の成長に不可欠な男性ホルモン「テストステロン」。
このテストステロンをはじめとするステロイドホルモンの主原料となるのが、食事から摂取される「コレステロール」、つまり脂質の一部です。
極端な脂質制限は、テストステロン値を低下させ、筋肉がつきにくい状態を自ら作り出してしまう可能性があるのです。
(※もちろん、摂りすぎも良くありません)
② 細胞膜を構成し、細胞の機能を維持する
私たちの体の細胞一つ一つを覆う「細胞膜」の主成分は脂質です。
細胞膜は、細胞内外の物質のやり取りをコントロールしたり、外部からの情報を受け取ったりする重要な役割を担っています。
良質な脂質を摂取することは、筋肉細胞を含む全身の細胞を健康に保ち、その機能を正常に維持するために不可欠です。
③ 脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の吸収を助ける
ビタミンの中には、脂質に溶けることで初めて体内に吸収される「脂溶性ビタミン」(ビタミンA, D, E, K)があります。
これらのビタミンは、免疫機能、骨の健康、抗酸化作用など、体のコンディション維持に重要な役割を果たします。
脂質を極端にカットすると、これらのビタミンの吸収が悪くなり、体調不良の原因となる可能性があります。
④ 長時間運動のエネルギー源となる
脂質は、炭水化物(1gあたり4kcal)やタンパク質(1gあたり4kcal)に比べて、1gあたり9kcalと、最も効率の良いエネルギー源です。
特に、長時間の運動や、強度の低い有酸素運動では、脂質が主要なエネルギーとして利用されます。
適切な脂質摂取は、エネルギー切れを防ぎ、持久力を維持するためにも重要です。
「脂質ゼロ」はむしろデメリットだらけ
これらの役割を考えれば、「脂質を完全にカットする」ことがいかに危険かが分かります。
ホルモンバランスの乱れ、細胞機能の低下、ビタミン吸収不良、エネルギー不足…まさにデメリットだらけです。
重要なのは「ゼロ」にすることではなく、「質」と「量」をコントロールすることなのです。
知らなきゃ損!脂質の「種類」を完全理解する

「脂質」と一口に言っても、その性質や体への影響は種類によって全く異なります。
大きく分けて3つの種類を理解しましょう。
① 飽和脂肪酸(Saturated Fatty Acids, SFA):摂りすぎ注意の脂質
【特徴と役割】常温で固体、エネルギー源、過剰摂取のリスク
主に動物性の脂肪に多く含まれ、常温で固まる性質があります(例:バター、ラード)。
重要なエネルギー源であり、ホルモン生成にも関わりますが、摂りすぎると悪玉(LDL)コレステロールを増やし、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。
【多く含む食品】肉の脂身、バター、ラード、乳製品、ココナッツオイルなど
完全に避ける必要はありませんが、「摂りすぎ」には注意が必要な脂質です。
② 不飽和脂肪酸(Unsaturated Fatty Acids, UFA):積極的に摂りたい「良い脂質」
【特徴と役割】常温で液体、細胞膜の流動性、悪玉コレステロール抑制など
主に植物油や魚油に多く含まれ、常温で液体の性質があります(例:オリーブオイル、魚油)。
細胞膜を柔らかく保ったり、悪玉コレステロールを減らしたり、血流を改善したりと、健康維持に非常に重要な役割を果たす、いわゆる「良い脂質」です。
【種類】一価不飽和脂肪酸(オメガ9) vs 多価不飽和脂肪酸(オメガ3, オメガ6)
不飽和脂肪酸は、さらに以下の種類に分けられます。
・一価不飽和脂肪酸(オメガ9):オリーブオイル、アボカド、ナッツ類など。
悪玉コレステロール抑制効果。
・多価不飽和脂肪酸:体内で合成できない「必須脂肪酸」。
– オメガ6系:大豆油、コーン油、ごま油など。
(摂りすぎ注意、後述)
– オメガ3系:青魚(EPA, DHA)、亜麻仁油、えごま油(α-リノレン酸)など。
(積極的に摂取すべき、後述)
③ トランス脂肪酸(Trans Fatty Acids):絶対に避けるべき「最悪の脂質」
【特徴と生成過程】人工的に作られた油、悪玉コレステロール増加、心疾患リスク
これは、自然界にはほとんど存在しない、人工的に作り出された脂質です。
液体の植物油に水素を添加して固形化する過程(水素添加)などで生成されます。
悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らし、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを大幅に高めることが分かっています。
まさに「食べるプラスチック」とも呼ばれる、最も避けるべき脂質です。
【多く含む食品】マーガリン、ショートニング、菓子パン、揚げ物など
マーガリン、ショートニング(パンやお菓子によく使われる)、これらを原料に使った菓子パン、ケーキ、スナック菓子、そしてファストフードの揚げ物などに多く含まれています。
食品表示の「原材料名」に「マーガリン」「ショートニング」「加工油脂」などと書かれていたら要注意です。
「脂質ゼロ」を目指した僕の失敗談
減量を始めた当初、僕は「脂質=敵」と思い込み、徹底的な「脂質ゼロ」生活を目指しました。
肉は皮なしの鶏むね肉のみ。
調理油は使わず、全て蒸すか茹でる。
ドレッシングはノンオイル。
ナッツやアボカドなんて、もってのほか。
確かに体重は一時的に落ちました。
しかし、体には異変が現れ始めました。
肌はカサカサになり、髪のパサつきもひどい。
そして何より、常に体がだるく、トレーニングへの意欲が全く湧かなくなったのです。
集中力も続かず、仕事の効率も低下。
さらに、便秘もひどくなりました。
後で知ったのですが、これらは極端な脂質不足によるホルモンバランスの乱れや、脂溶性ビタミンの吸収不良が原因だったようです。
僕は、体重という数字だけを追い求め、健康という最も大切なものを失いかけていました。
「脂質ゼロ」は、決して健康的な減量法ではなかったのです。
トレーニーが「特に」注目すべき脂質:オメガ3 & オメガ6

「良い脂質」である不飽和脂肪酸の中でも、特に意識すべきなのが「必須脂肪酸」であるオメガ3とオメガ6です。
この二つの「バランス」が非常に重要です。
① オメガ6脂肪酸:摂りすぎ注意?(炎症促進の可能性)
オメガ6脂肪酸(リノール酸など)も必須脂肪酸であり、体に必要なものですが、現代の食生活では過剰摂取になりがちです。
サラダ油(大豆油、コーン油)、加工食品、外食などに多く含まれています。
オメガ6脂肪酸を過剰に摂取すると、体内で炎症を引き起こしやすくなったり、アレルギー反応を悪化させたりする可能性が指摘されています。
【多く含む食品】一般的な植物油(大豆油、コーン油など)、加工食品
意識的に「減らす」ことを心がけたい脂質です。
② オメガ3脂肪酸:積極的に摂取すべき「スーパー脂質」
一方、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)は、現代人に不足しがちな、非常に重要な必須脂肪酸です。
その効果は多岐にわたります。
【驚くべき効果】炎症抑制、血流改善、筋肉痛軽減、メンタルヘルス…
・抗炎症作用:トレーニングによる筋肉の炎症を抑え、回復を早める。
・血流改善:血液をサラサラにし、筋肉への栄養供給を促進。
・筋肉痛軽減:トレーニング後の筋肉痛を和らげる効果。
・脳機能サポート:DHAは脳の構成成分であり、記憶力や集中力維持に関与。
・メンタルヘルス:うつ病リスクの低減など、精神安定への効果も示唆。
まさにトレーニーにとって「スーパー脂質」と呼ぶにふさわしい効果が期待できます。
【多く含む食品】青魚(サバ、イワシ、サンマ)、亜麻仁油、えごま油、チアシード
意識的に「増やす」ことを心がけたい脂質です。
理想は「オメガ6:オメガ3=4:1」以内?現代人はオメガ6過剰
オメガ6とオメガ3の理想的な摂取バランスは「4:1」以内と言われていますが、現代の一般的な食生活では「10:1」あるいは「20:1」以上にもなり、極端にオメガ6に偏っていると指摘されています。
このバランスを是正することが、健康維持とトレーニング効果向上の鍵となります。
目的別(増量/減量)!脂質の「適切な摂取量」は?

では、脂質は1日にどれくらい摂れば良いのでしょうか?
① 総摂取カロリーに占める割合:「20〜30%」が基本
PFCバランスにおいて、脂質の摂取エネルギーが、1日の総摂取エネルギーに占める割合の目標量は「20%〜30%」とされています。
(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より)
これは、トレーニーにとっても基本的な目安となります。
(例:1日の総摂取カロリーが2500kcalの場合、脂質は500kcal〜750kcal。
1g=9kcalなので、約55g〜83g)
② 減量期でも「最低限(体重×0.8g程度?)」は必要
減量期であっても、脂質を総摂取カロリーの20%未満にまで極端にカットするのは推奨されません。
前述のホルモン生成や細胞機能維持のために、最低限、体重1kgあたり0.8g〜1g程度の脂質は確保したいところです。
(例:体重70kgなら、56g〜70g程度)
③ 量だけでなく「質」(不飽和脂肪酸中心)を最重視する
最も重要なのは、設定した脂質摂取量の範囲内で、できるだけ「質」の高い脂質(不飽和脂肪酸、特にオメガ3)を中心に摂取することです。
飽和脂肪酸は控えめにし、トランス脂肪酸は可能な限り「ゼロ」を目指しましょう。
今日から実践!「良い脂質」を食事に取り入れる具体策

難しく考える必要はありません。
日々の食事に、少しの工夫を加えるだけです。
① 調理油を「オリーブオイル(オメガ9)」や「米油」に変える
炒め物などに使う油を、安価なサラダ油(大豆油、コーン油)から、オリーブオイル(エクストラバージン推奨)や、酸化しにくい米油、キャノーラ油などに変えてみましょう。
これらはオメガ9や、比較的バランスの取れた脂肪酸組成を持っています。
② 「青魚」を週2〜3回食べる(サバ缶活用も!)
オメガ3(EPA/DHA)を最も効率よく摂取できるのが、サバ、イワシ、サンマなどの青魚です。
刺身や焼き魚で、週に2〜3回は食卓に取り入れたいところ。
調理が面倒なら、「サバの水煮缶」が最強の味方です。
手軽に、安価に、高品質なオメガ3とタンパク質を摂取できます。
③ 間食に「ナッツ類(素焼き)」や「アボカド」を取り入れる
小腹が空いた時のおやつを、スナック菓子から「素焼きのナッツ」(アーモンド、くるみなど)に変えてみましょう。
良質な脂質(オメガ9、オメガ6)と食物繊維、ビタミンEが豊富です。(※食べ過ぎ注意)
「アボカド」も「森のバター」と呼ばれるほど良質な脂質(オメガ9)が豊富。
サラダに加えたり、ディップにしたりするのもおすすめです。
④ 「亜麻仁油」や「えごま油」をサラダにかける(加熱NG)
オメガ3(α-リノレン酸)を手軽に摂取する方法として、亜麻仁油やえごま油があります。
これらは非常に熱に弱いため、ドレッシングとしてサラダにかけたり、納豆に混ぜたりして、必ず「生」で摂取しましょう。
(加熱調理には絶対に使わないこと)
⑤ サプリメント(フィッシュオイル)の活用は?
どうしても青魚を食べる機会が少ない、という人は、「フィッシュオイル」のサプリメントでEPA/DHAを補うのも有効な手段です。
品質(酸化していないか)や含有量を確認して選びましょう。
これはNG!トレーニーが避けるべき「脂質の摂り方」

最後に、これだけは避けてほしい、NGな脂質の摂り方です。
① 極端な「脂質ゼロ」ダイエット
繰り返しになりますが、脂質を完全にカットすることは、健康を害し、トレーニング効果も低下させる危険な行為です。
最低限必要な量は、必ず確保しましょう。
② 「揚げ物」や「加工食品」中心の食生活
唐揚げ、フライドポテト、カツ丼、菓子パン、スナック菓子…。
これらは美味しいですが、質の悪い脂質(飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、酸化した油)の塊です。
たまのご褒美なら良いですが、日常的にこれらの食品ばかりを食べるのは、健康にも、体作りにも最悪です。
③ 「質」を無視したカロリー計算
「脂質〇〇g」という「量」だけを計算し、その「質」を全く考慮しないのも問題です。
同じ脂質量でも、アボカドや魚油から摂るのと、マーガリンや揚げ物から摂るのでは、体への影響は全く異なります。
カロリー計算と同時に、「どんな脂質から摂るか」を常に意識しましょう。
サバ缶が僕の「関節痛」を救ったかもしれない話
僕は、トレーニング歴3年。
ベンチプレスやスクワットの重量も伸び、体も大きくなってきましたが、ここ1年ほど、肘や膝の関節に慢性的な「鈍い痛み」を感じるようになっていました。
「高重量の代償かな…」と諦めていたのですが、ある時「オメガ3脂肪酸の抗炎症効果」についての記事を読みました。
もしかしたら、食生活の偏り(オメガ6過剰)が、関節の炎症を引き起こしているのかも?
僕は、それまでほとんど魚を食べていませんでした。
そこで、意識的に「サバの水煮缶」を週に3〜4回、昼食のサラダに加えるようにしてみました。
正直、あまり期待はしていませんでした。
しかし、2ヶ月ほど続けた頃、ふと気づいたのです。
「あれ?最近、肘や膝の痛みが気にならない…」。
完全に痛みが消えたわけではありませんが、以前のような慢性的な鈍痛は、明らかに軽減されていました。
もちろん、他の要因もあるかもしれません。
しかし、僕の中で「良い脂質(オメガ3)って、本当に体に効くんだ…」という実感が生まれた瞬間でした。
サバ缶は、僕の筋肉だけでなく、関節の健康もサポートしてくれているのかもしれません。
まとめ:「良い脂質」を味方につけ、健康的でパワフルな体へ

脂質は、決してあなたの敵ではありません。
むしろ、その「質」を選び、「量」をコントロールすることで、あなたの筋肉の成長、パフォーマンスの向上、そして健康維持を力強くサポートしてくれる、不可欠なパートナーなのです。
最後に、脂質との賢い付き合い方のポイントをまとめます。
- 脂質は必須!:ホルモン生成、細胞機能、ビタミン吸収、エネルギー源として不可欠。
ゼロにするのはNG。 - 種類を見極める:「飽和脂肪酸」は控えめに、「不飽和脂肪酸(特にオメガ3)」は積極的に、「トランス脂肪酸」は絶対に避ける。
- オメガ3を意識:青魚、亜麻仁油、えごま油、ナッツ類を食生活に取り入れる。
- 適切な量を守る:総カロリーの「20〜30%」目安。
減量中でも最低限は確保。 - 悪い脂質を避ける:揚げ物、加工食品、マーガリン、ショートニングは極力減らす。
「脂質恐怖症」を克服し、「良い脂質」を戦略的に食事に取り入れること。
それが、あなたが短期的な結果だけでなく、長期的に健康で、エネルギッシュな体を維持するための、重要な鍵となるはずです。



