「リストストラップ、バーに巻くのが毎回面倒くさいんだよな…。もっと手軽なのないの?」
「ジムで上級者が使ってる、手首にベロみたいなの付いたギア…あれが『パワーグリップ』か。
値段高いけど、リストストラップと何が違うんだろう?」
「パワーグリップって、デッドリフトでも使えるの?高重量でも滑ったりしないか不安…」
デッドリフトや懸垂で背中を追い込むトレーニーにとって、「握力補助ギア」は必須アイテムです。
その代表格である「リストストラップ」は、安価で固定力も高いですが、多くの人がその「巻き付けの手間」にストレスを感じています。
特に、インターバル中や種目移行のたびに、あの布をバーにクルクルと巻き付ける作業は、トレーニングのリズムを崩す原因にもなりかねません。
その「面倒くささ」を一発で解決するギアとして登場したのが、「パワーグリップ」です。
「握力補助の最終兵器」とも呼ばれるこのギアは、その圧倒的な手軽さで、多くの上級者トレーニーに愛用されています。
しかし、その一方で、「高価であること」「リストストラップとの違い」など、購入をためらう疑問点も多いはず。
この記事では、そんなパワーグリップの絶大な効果とメリット、知っておくべきデメリット、そしてライバルである「リストストラップ」との徹底比較を解説します。
この記事でわかること
- パワーグリップとリストストラップの「決定的」な違い(手軽さ vs 固定力)
- パワーグリップがもたらす絶大なメリットと、知っておくべきデメリット
- あなたの目的(コスト/手軽さ/種目)に合った、最適なギアの選び方
パワーグリップとは?リストストラップとの「決定的」な違い

どちらも「握力を補助する」という目的は同じですが、その「仕組み」と「特性」が全く異なります。
① パワーグリップ:握力を「ベロ」で補助。 着脱が超カンタン
手首に巻き付けるリストバンド部分から、「ベロ」(ラバーや革製の滑り止め素材)が手のひらを覆うように伸びている形状が特徴です。
使い方:バーベルやダンベルに対し、この「ベロ」を「上から」巻き付ける(引っ掛ける)だけ。
特徴:着脱が圧倒的に手軽で、数秒でセット完了できます。
② リストストラップ:手とバーを「布」で巻き付け固定。 固定力が高い
布や革製の「ヒモ(ベルト)」を手首に巻き、その先端をバーベルにクルクルと巻き付けて固定します。
使い方:バーの下からストラップを通し、複数回巻き付けて、手首をひねるようにして締め込みます。
特徴:正しく巻けば、手とバーが一体化するほどの強力な固定力が得られます。
ただし、巻き付けに「手間」と「時間」がかかります。
③ 最大の違いは「着脱の手軽さ」 vs 「固定力/価格」
両者の違いは、以下の点に集約されます。
・パワーグリップ:高価だが、着脱が超絶ラク。
・リストストラップ:安価だが、着脱が面倒くさい。
(固定力については、デッドリフトなどの超高重量域を除けば、パワーグリップでも十分強力です)
どちらを選ぶかは、あなたが「価格」と「手軽さ」のどちらを優先するか、というトレードオフになります。
パワーグリップがもたらす「3つの絶大なメリット」

価格が高いにも関わらず、なぜ多くの上級者はパワーグリップを選ぶのでしょうか?
それは、価格以上の圧倒的なメリットがあるからです。
① 圧倒的な「時間短縮」と「手軽さ」(最大のメリット)
これこそがパワーグリップの真価です。
リストストラップを巻くのに、慣れていても片手10秒、両手で20秒かかるとします。
1回のトレーニングで10セット行うなら、それだけで200秒(約3分以上)の時間を「巻く作業」に費やしています。
パワーグリップなら、これがほぼ「ゼロ」になります。
この「手軽さ」と「時短」が、インターバル間のリズムを崩さず、トレーニングの密度と集中力を劇的に高めます。
ドロップセットやスーパーセットなど、素早い移行が求められる種目でも威力を発揮します。
② 握力の限界を超え、ターゲット筋(背中)を追い込める
これはリストストラップと共通の効果ですが、握力がボトルネックにならなくなるため、背中やハムストリングスといった「本当に鍛えたい大きな筋肉」を、握力の心配なく限界まで追い込むことができます。
「あと1回…!」という場面で、指が開いてしまう悔しさから解放されます。
③ プル系(引く)だけでなく、プッシュ系(押す)にも使える?(手首保護)
これは意外と知られていない活用法です。
パワーグリップの「ベロ」の部分は、ラバーなどの厚手素材でできています。
ベンチプレスやショルダープレスなどの「押す(プッシュ系)」種目の際、このベロを手のひらとバーの間に挟み込むことで、手のひらのマメを防ぐ「グローブ」の代わりとして使えます。
さらに、ベロの厚みがクッションとなり、高重量が手首に食い込むのを和らげ、間接的に「手首を保護」する役割も果たしてくれるのです。
(※リストラップのような強力な固定機能はありません)
知っておくべき「デメリット」と注意点

メリットばかりに見えるパワーグリップですが、もちろんデメリットや注意点も存在します。
① 価格が高い(リストストラップの数倍)
最大のデメリットは「価格」です。
安価なリストストラップが1,000円〜3,000円程度で手に入るのに対し、パワーグリップは安価なモデルでも3,000円以上、有名ブランド(Versa Grippsなど)になると8,000円〜10,000円近くします。
この初期投資の高さが、導入の最大の障壁となります。
② バーを「直接握る感覚」が薄れる?
パワーグリップは、手のひらとバーの間に「ベロ」を挟み込む構造です。
そのため、リストストラップ(布を巻き込むだけ)に比べると、バーベルのローレット(ギザギザ)を「素手で直接握る」という感覚が薄れます。
この感覚の違いを嫌う上級者や、握力も同時に鍛えたいと考える人もいます。
③ 超高重量デッドリフトでは滑る可能性も?(フィギュア8との比較)
一般的なトレーニングでは十分すぎるほどの固定力がありますが、200kgを超えるような「超高重量」のデッドリフトを行う場合、ベロの素材(特にラバー)とバーの相性によっては、滑りが発生する可能性がゼロではありません。
最強の固定力を求めるパワーリフターなどは、デッドリフト専用の「フィギュア8ストラップ」を選ぶ場合もあります。
(ただし、これは一般トレーニーにはオーバースペックです)
「巻く手間」から解放され、トレーニングの密度が爆上がりした
僕は、長年リストストラップ(ループタイプ)を愛用していました。
その固定力には満足していましたが、背中の日の「面倒くささ」には辟易していました。
ラットプルダウン→ケーブルロウ→ダンベルロウ…種目を移るたびに、あのクルクルと巻き付ける作業。
インターバルが長引き、集中力が途切れがちでした。
「この巻いてる時間、無駄じゃないか…?」。
思い切って、高価な「パワーグリップ(Versa Gripps)」を購入してみました。
そして、次の背中トレで使ってみて…僕は衝撃を受けました。
「え、終わり?速っ!」。
バーにベロを引っ掛けて、握る。
文字通り1〜2秒。
種目間の移行が、信じられないほどスムーズになりました。
インターバルも短縮でき、トレーニング全体の「密度」が爆発的に上がったのです。
結果、その日はいつもより短い時間で、背中をオールアウトさせることができました。
「これは…時間と効率を買っているんだ」。
初期投資は高かったですが、それ以上のリターン(快適さと集中力)があることを確信しました。
もう、あの面倒だったストラップには戻れません。
【最重要】パワーグリップの「正しい使い方」と「NGな使い方」

パワーグリップも、正しく使わなければ効果は半減します。
基本的な使い方をマスターしましょう。
基本の使い方(プル系:引く種目):バーに「上から」巻き付ける
これがパワーグリップの神髄です。
1. 手首にパワーグリップを装着します。
2. バーベルやダンベルを握る際、グリップ(握り手)よりも「上」から「ベロ」を垂らします。
3. そのベロを、バーに「巻き付ける」ように(バーの下をくぐらせて)、手のひらとバーの間に挟み込みます。
4. そのままベロごとバーを握り込みます。
こうすることで、重りがかかった時に、ベロがバーに食い込み、強力な摩擦力と固定力が生まれます。
ベロの先端が、指先側から出てくる形になります。
応用の使い方(プッシュ系:押す種目):ベロを「手のひらの保護」に
ベンチプレスやショルダープレスなど、「押す」種目で使う場合です。
1. プル系とは逆に、ベロをバーに巻き付けません。
2. ベロを手のひらの上に平らに広げます。
3. そのベロの上から、バーを普通に握ります。
こうすることで、ベロが「手のひらの皮膚」と「バー」の間のクッションとなり、マメの防止や、手首への食い込みを軽減する「グローブ」や「リストパッド」のような役割を果たします。
初心者がやりがちな「NGな使い方」(巻き付けが甘い、逆方向に巻く等)
NG①:プル系で、ベロをバーに巻き付けず、ただ握る:
これでは滑り止めにしかならず、パワーグリップ本来の「握力補助」効果は得られません。
必ずベロをバーに巻き付けましょう。
NG②:ベロの先端を、手のひら側に巻き込む:
ベロが締まらず、すぐにほどけてしまいます。
必ず、指先側から出るように巻き付けます。
失敗しない!パワーグリップの「選び方」4つのポイント

高価な買い物だからこそ、選び方は慎重に。
① 素材:「ラバー」 vs 「レザー(革)」vs「布」
ベロの素材は、グリップ力と耐久性に直結します。
・ラバー(ゴム):最も一般的。
グリップ力(摩擦力)が非常に高く、滑りにくい。
耐久性も高い。
迷ったらこれ。
・レザー(革):使うほどに手に馴染む。
耐久性が非常に高いが、ラバーよりは滑りやすい場合がある。
・布製:安価なモデルに見られる。
耐久性やグリップ力はラバーやレザーに劣ることが多い。
② ベロの「長さ」:ターゲット種目による違い(短め=万能、長め=高重量向き)
ベロの長さも重要です。
・短め〜標準:着脱がより素早く、ダンベルなど細いグリップにも巻きやすい。
万能タイプ。
・長め:バーベルに2周以上巻き付けられるため、固定力が高まる。
デッドリフトなど高重量を扱う人向けだが、着脱の手間は少し増える。
③ 【最難関】「サイズ」選び(手首の太さ):計測が必須
リストストラップと違い、パワーグリップはサイズ(S, M, Lなど)が非常に重要です。
これは「ベロの大きさ」ではなく、「手首に巻くバンド部分の長さ」を指します。
必ず、購入前に自分の「手首の周囲(一番細い部分)」をメジャーで正確に計測し、メーカーが提示するサイズ表と照らし合わせてください。
サイズが合わないと、適切に固定できず、効果が半減します。
④ 有名ブランド(Versa Gripps等) vs 安価なモデル:何が違う?(耐久性・素材)
・有名ブランド(例:Versa Gripps):
元祖パワーグリップ。
特許取得の素材(ラバー)による圧倒的なグリップ力と耐久性、計算された設計によるフィット感が魅力。
高価だが、長く使えるため結果的にコスパが良いという意見も多い。
・安価なモデル(数千円):
手軽にパワーグリップの利便性を試せる。
ただし、素材の耐久性が低く、ベロがすぐに劣化したり、マジックテープが弱くなったり、縫製がほつれたりするリスクは高い。
結論:予算が許すなら、耐久性と信頼性の高い有名ブランドの製品(特にラバー素材)を選ぶのが、長期的に見ておすすめです。
結論:リストストラップとどっちが良い?目的別おすすめ

結局、どちらを選ぶべきか?
あなたの優先順位で決めましょう。
「手軽さ」「快適性」「種目移行のスムーズさ」を求めるなら:「パワーグリップ」
トレーニング中の「面倒くささ」を徹底的に排除し、リズムと集中力を最優先したいなら、パワーグリップが最適解です。
ドロップセットなどを多用する人にもこちらが向いています。
初期投資(価格)が許容できるなら、トレーニングの質を上げる最高の「時短ギア」となります。
「コスト」「最強の固定力(特にデッドリフト)」「握る感覚」を求めるなら:「リストストラップ」
「コストを抑えたい」「デッドリフトで200kg以上を扱うため、絶対に滑らない最強の固定力が欲しい」「バーを直接握る感覚が大事だ」という人は、従来通りのリストストラップ(特にループタイプやフィギュア8)がおすすめです。
巻き付けの手間を、そのメリットが上回ると感じるでしょう。
「押し」にも使えるとは思わなかった!
僕は、パワーグリップは「引く」種目専用のギアだと思い込んでいました。
しかし、ある日ジムで、パワーグリップを装着したままベンチプレスをしている人を見かけました。
「え?なんで?」。
不思議に思って観察していると、彼はベロをバーに巻き付けるのではなく、手のひらに敷く「パッド」のように使っていたのです。
真似してやってみると、これが驚くほど快適。
僕はいつも高重量ベンチで手のひらが痛くなるのに悩んでいましたが、パワーグリップのベロがクッションになり、痛みが全くない。
さらに、手首もなんとなく安定する感覚。
それ以来、僕は「引く」日はもちろん、「押す」日も、グローブ兼リストパッド代わりとして、パワーグリップを外さなくなりました。
高価な買い物でしたが、プル系にもプッシュ系にも使える「万能ギア」だと知り、その価値を再認識しました。
まとめ:パワーグリップは「時間」と「効率」を買うギアである

パワーグリップは、単なるリストストラップの代替品ではありません。
それは、「面倒な巻き付け作業の時間をゼロにする」ことで、あなたのトレーニングの「密度」「集中力」「効率」を劇的に向上させる、全く新しいカテゴリーのギアなのです。
最後に、パワーグリップ導入のポイントをまとめます。
- 最大メリット:圧倒的な「手軽さ」と「時間短縮」。
トレーニングのリズムを崩さない。 - デメリット:「価格が高い」。
リストストラップに比べ数倍のコスト。 - 使い方:プル系(引く)は「巻き付ける」。
プッシュ系(押す)は「パッド代わり」に。 - 選び方:「サイズ(手首周り)」の計測は必須。
迷ったら、耐久性とグリップ力に優れた「ラバー素材」の「有名ブランド品」が長期的にはおすすめ。 - どっちが良い?:「手軽さ・効率」ならパワーグリップ、「コスト・最強固定力」ならリストストラップ。
「リストストラップを巻く時間がもったいない」——もしあなたがそう感じ始めたなら、それはパワーグリップを検討すべきサインです。



