「今日のトレーニング、なんか気合が入らないな…。もっと集中力とパワーが欲しい!」
「ジムでシャカシャカ振って飲んでる人いるけど、あれってプレワークアウト?飲むと本当に違うの?」
「プレワークアウトって種類多すぎ!カフェインとか色々入ってるみたいだけど、副作用とか大丈夫なのかな…?」
トレーニング前の30分〜1時間前に摂取することで、集中力、エネルギー、パワー、持久力を高め、その日のトレーニングパフォーマンスを最大限に引き出す——。
そんな魅力的な触れ込みで、多くの中〜上級者トレーニーに愛用されているのが「プレワークアウトサプリメント」です。
疲れている日でも質の高いトレーニングを可能にし、停滞期を打破する「起爆剤」として、あなたの限界を引き上げてくれる可能性を秘めています。
しかし、その一方で、様々な成分が複合的に配合されているため、「何がどう効いているのか分かりにくい」「副作用はないのか不安」「自分に本当に必要なのか疑問」といった声が多いのも事実です。
「魔法の粉」のように過信するのも、「よく分からないから怖い」と敬遠するのも、どちらももったいない。
この記事では、プレワークアウトサプリメントの効果、主要成分の役割、潜在的な副作用と注意点、そして失敗しない選び方まで、科学的根拠に基づいて徹底的に解説します。
この記事でわかること
- プレワークアウトサプリメントがトレーニングパフォーマンスを高める主な効果と仕組み
- 主要な配合成分(カフェイン、βアラニン、シトルリン等)の役割と期待できる効果
- 副作用のリスクと安全な使い方、自分に合った製品の選び方のポイント
プレワークアウトサプリメントとは?飲む「エナジードリンク」?

まず、プレワークアウトサプリメントがどのようなものか、その目的と一般的なエナジードリンクとの違いを見ていきましょう。
① 目的:トレーニング前のパフォーマンスを最大化する
プレワークアウトサプリメント(Pre-workout Supplement)の唯一にして最大の目的は、その名の通り、「ワークアウト(トレーニング)前(Pre)」に摂取することで、そのトレーニングセッション中のパフォーマンスを最大限に高めることです。
疲労感を軽減し、エネルギーレベルを引き上げ、集中力を研ぎ澄ませることで、「今日の限界」を少しでも超えるためのサポートをします。
② 主な効果:覚醒・集中力UP、パンプアップ、持久力向上、疲労軽減
配合される成分によって期待できる効果は異なりますが、一般的には以下の効果を狙って設計されています。
・覚醒・集中力向上:カフェインなどの覚醒作用により、眠気や倦怠感を払い、トレーニングへの集中力を高める。
・パンプアップ(筋肉の張り):血流を促進する成分により、トレーニング部位への血流量が増加し、筋肉がパンパンに張る感覚(パンプ)を高める。
・筋持久力向上:筋肉の疲労物質(乳酸など)の蓄積を緩やかにし、高強度の運動をより長く続けられるようにサポートする。
・疲労感の軽減:中枢神経系への作用により、トレーニング中の主観的な疲労感を軽減する。
③ エナジードリンクとの違い:筋トレ特化の成分配合
「それって、エナジードリンクと同じじゃないの?」と思うかもしれません。
確かにカフェインを含む点では似ていますが、プレワークアウトサプリメントは、筋トレのパフォーマンス向上に特化した成分(例:βアラニン、シトルリン、クレアチンなど)が、エナジードリンクよりも高濃度で配合されている点が大きく異なります。
また、多くの場合、エナジードリンクに含まれる過剰な糖分が含まれていない(あるいは少ない)のも特徴です。
主要成分を徹底解剖!何が「効く」のか?

プレワークアウトサプリの効果は、配合されている成分によって決まります。
代表的な成分とその役割を理解しましょう。
① カフェイン:覚醒・集中力・脂肪燃焼の王様
ほとんどのプレワークアウトに含まれる最重要成分です。
効果:中枢神経系を興奮させ、覚醒レベル、集中力、注意力を高めます。
また、疲労感を軽減し、脂肪燃焼を促進する効果も報告されています。
注意点:過剰摂取は動悸、不眠、不安感などの副作用を引き起こします。
耐性がつきやすい(効きにくくなる)ため、常用は注意が必要です。
(含有量は製品により様々。コーヒー1杯分〜3杯分以上まで)
② β-アラニン:「ピリピリ感」の正体?筋持久力向上
摂取すると顔や手先が「ピリピリ」する感覚(βアラニンフラッシュ)を引き起こすことで有名なアミノ酸の一種。
効果:体内でカルノシンという物質に変換され、筋肉内に蓄積する乳酸などの疲労物質を緩衝する働きを高めます。
これにより、高強度の運動(特に1〜4分程度の持続的な運動)における筋持久力を向上させ、「あと1レップ」を可能にすると言われています。
注意点:ピリピリ感は無害ですが、不快に感じる人もいます。
③ クレアチン:高強度パワーの源泉(既習:別記事参照推奨)
筋力向上サプリメントの王様。
(詳細は別記事「クレアチン完全ガイド」参照)
効果:筋肉のエネルギー通貨であるATPの再合成を促進し、ベンチプレスやスクワットのような高強度・短時間のパワー発揮能力を高めます。
注意点:効果を発揮するには、毎日継続的に摂取し、筋肉内に貯蔵レベルを高める必要があります。
プレワークアウトに含まれる量だけでは不十分な場合が多く、別途単体での摂取が推奨されます。
④ シトルリン / アルギニン:NO(一酸化窒素)産生とパンプアップ
血管拡張作用を持つアミノ酸。
効果:体内でNO(一酸化窒素)の産生を促進し、血管を拡張させ、筋肉への血流量を増加させます。
これにより、トレーニング中の筋肉の張り(パンプアップ)感が強まったり、栄養素や酸素の供給が向上したりする効果が期待できます。
(アルギニンよりシトルリンの方が吸収率が良いとされます)
⑤ BCAA / EAA:筋肉分解抑制とエネルギー源(既習:別記事参照推奨)
必須アミノ酸の一部または全部。
(詳細は別記事「BCAA vs EAA」参照)
効果:トレーニング中の筋肉分解(カタボリック)を抑制したり、エネルギー源として利用されたりする効果が期待されます。
注意点:ホエイプロテインを十分に摂取していれば、追加摂取の必要性は低いと考えられています。
プレワークアウトに少量含まれていても、効果は限定的かもしれません。
⑥ その他(ベタイン、タウリン、チロシンなど)
製品によっては、筋力向上や疲労軽減、集中力向上などを謳った様々な成分(ベタイン、タウリン、チロシン、各種ビタミン・ミネラルなど)が配合されています。
効果については、まだ研究途上のものも多いです。
本当に必要?プレワークアウトサプリが必要な人・不要な人

プレワークアウトは、全ての人にとって必須のサプリメントではありません。
導入を検討すべき人と、そうでない人を見てみましょう。
【必要な可能性が高い人】
停滞期を打破したい中級者以上
トレーニング歴が長く、なかなか重量や回数が伸びなくなった中級者以上のトレーニーが、プラトー(停滞期)を打破するための「起爆剤」として試してみる価値はあります。
疲れているが質の高いトレーニングをしたい人
仕事終わりで疲労困憊だけど、どうしても今日のトレーニングを質の高いものにしたい、という場合に、カフェインなどの覚醒作用が助けになります。
早朝トレーニングで体を覚醒させたい人
朝が弱く、早朝トレーニングでなかなかエンジンがかからない、という人が、体をシャキッと目覚めさせるために活用するのは有効です。
【不要・注意が必要な人】
初心者(まずは基本のフォームと食事から)
トレーニングを始めたばかりの初心者は、プレワークアウトに頼る前に、まずは「正しいフォームの習得」「バランスの取れた食事」「十分な休養」といった基本を固めることが最優先です。
基本ができていないのに、サプリメントでブーストしても効果は薄く、怪我のリスクを高めるだけです。
カフェインに敏感な人、睡眠に問題を抱える人
コーヒーを飲むと動悸がしたり、夜眠れなくなったりする「カフェインに敏感な人」は、プレワークアウトの摂取は慎重になるべきです。
ノンカフェイン(カフェインフリー)の製品を選ぶという選択肢もあります。
また、普段から睡眠に問題を抱えている人が、夕方以降にカフェイン入りのプレワークアウトを摂取すると、睡眠の質をさらに悪化させる可能性があります。
健康上の問題(高血圧など)がある人
カフェインやその他の刺激成分は、血圧や心拍数を上昇させる可能性があります。
高血圧、心臓疾患、その他持病がある方は、使用前に必ず医師に相談してください。
副作用と注意点:安全に使うために知っておくべきこと

プレワークアウトは効果的な反面、いくつかの副作用や注意点があります。
① カフェインによる副作用(動悸、不眠、耐性、依存性)
最も注意すべきはカフェインです。
過剰摂取や、感受性が高い人の場合、「動悸」「手の震え」「吐き気」「頭痛」「不安感」「不眠」などを引き起こす可能性があります。
また、継続的に摂取すると「耐性」がつき、同じ量では効果を感じにくくなります。
効果を得るために摂取量を増やしていくと、副作用のリスクも高まります。
精神的な「依存性」にも注意が必要です。
② β-アラニンによる「ピリピリ感(フラッシュ)」
β-アラニンを摂取すると、皮膚(特に顔や手先)がピリピリ、チクチクする感覚(βアラニンフラッシュ、またはパレステジア)が現れることがあります。
これは一時的で無害な反応ですが、不快に感じる人もいます。
少量から始める、摂取を数回に分けるなどで軽減できる場合があります。
③ 胃腸への負担(下痢など)
一部の成分(クレアチン、高濃度のカフェイン、人工甘味料など)が、人によっては胃の不快感や下痢を引き起こす可能性があります。
空腹時に摂取すると起こりやすい場合があるため、軽い食事の後に摂るなどの工夫が必要かもしれません。
④ 過剰摂取のリスクと「サイクル摂取(休止期間)」の必要性
「もっと効かせたい」と推奨量を超えて摂取するのは絶対にやめましょう。
効果が高まるわけではなく、副作用のリスクが急増するだけです。
また、カフェイン耐性の問題を避けるため、数週間〜数ヶ月継続して使用したら、意図的に数週間〜1ヶ月程度の「休止期間(オフサイクル)」を設ける「サイクル摂取」が推奨されることもあります。
⑤ ドーピング検査対象者は成分を要確認
スポーツ選手など、ドーピング検査の対象となる方は、製品に禁止物質が含まれていないか、認証(例:インフォームドチョイス)などを確認するなど、細心の注意が必要です。
プレワークアウトに「依存」しかけた僕
僕は、プレワークアウトの「覚醒感」と「パンプ感」の虜になっていました。
飲むと、まるで自分がスーパーマンになったかのように力がみなぎり、トレーニングが最高に楽しくなる。
いつしか、「プレワークアウトを飲まないと、今日のトレーニングはダメだ」と思い込むようになっていました。
最初は週に1〜2回の使用だったのが、気づけば毎回飲むのが当たり前に。
そして、だんだん同じ量では効かなくなってきて、推奨量を超えて2杯、3杯と飲むようになっていました。
その結果、トレーニング中はハイになれるものの、夜は全く寝付けず、日中は常にイライラ。
完全にカフェイン依存の状態でした。
「これはマズい…」。
僕は、プレワークアウトを断ち切る決意をしました。
最初の1週間は、ひどい頭痛と倦怠感に襲われましたが、それを乗り越えると、徐々に体が正常に戻っていくのを感じました。
プレワークアウトは、確かに素晴らしいブーストをくれます。
しかし、それに「頼りすぎる」ことの危険性を、僕は身をもって学びました。
今は、本当にここぞという時だけ、推奨量を守って使うようにしています。
失敗しない!プレワークアウトサプリの「選び方」5つのポイント

数ある製品の中から、自分に合ったものを選ぶためのポイントです。
① 「目的」に合った成分配合か?(パンプ重視?持久力重視?)
あなたがプレワークアウトに何を一番求めているかを考えましょう。
・パンプ感を高めたい:シトルリン、アルギニンが高配合のもの。
・筋持久力を高めたい:β-アラニン、ベタインなどが配合されているもの。
・覚醒・集中力を高めたい:カフェイン含有量が高いもの(ただし注意)。
成分表をよく見て、自分の目的に合った配合の製品を選びましょう。
② 主要成分の「含有量」は十分か?(特にカフェイン量)
成分が「入っている」だけでなく、「どれだけ入っているか(含有量)」が重要です。
効果が期待できるとされる一般的な推奨量(例:シトルリン6g以上、βアラニン3g以上)が含まれているかを確認しましょう。
特にカフェイン量は製品によって大きく異なる(50mg〜400mg以上)ため、自分の耐性を考慮して、最初は含有量が少なめのものから試すのが安全です。
③ 「体感」には個人差があることを理解する
サプリメントの効果の感じ方(体感)には、非常に大きな個人差があります。
レビューで「めちゃくちゃ効いた!」と絶賛されていても、あなたには全く効かない、あるいは副作用だけが強く出る、ということも十分にあり得ます。
最初から大容量のものを買わず、少量パックやお試しサイズがあれば、それで自分の体との相性を試してみるのが賢明です。
④ フレーバー(味)と溶けやすさ
いくら効果が高くても、不味くて飲めなければ意味がありません。
海外製品は独特の甘さやフレーバーが多い傾向があります。
レビューを参考に、自分が続けられそうな味を選びましょう。
水にサッと溶ける「溶けやすさ」も、ストレスなく使う上で重要です。
⑤ コストパフォーマンス
プレワークアウトは継続して使うものであり、決して安価ではありません。
1回あたりのコスト(サービング単価)を計算し、自分の予算に合った、続けられる価格帯の製品を選びましょう。
効果を最大化する「摂取タイミング」と「摂取量」

せっかく飲むなら、効果を最大限に引き出したいですよね。
タイミング:トレーニング開始の「30〜60分前」が基本
多くのプレワークアウトに含まれるカフェインなどの成分が血中濃度を高め、効果を発揮し始めるまでに、通常30分〜60分程度かかります。
そのため、トレーニングを開始する30〜60分前に摂取するのが、最も効果的なタイミングとされています。
摂取量:最初は「半量〜推奨量の最低限」から試す
製品に記載されている「推奨摂取量(1スクープなど)」は、あくまで目安です。
特に初めて使う製品や、カフェイン含有量が高い製品の場合は、必ず「推奨量の半分」程度の少量から試し、自分の体の反応(効果と副作用)を確認しましょう。
問題なければ、徐々に推奨量まで増やしていきます。
いきなり最大量で始めるのは非常に危険です。
空腹時?食後?
空腹時に摂取する方が、成分の吸収が速く、効果を感じやすいと言われています。
しかし、胃腸への刺激が強くなる可能性もあります。
胃が弱い人は、軽い食事(例:バナナ1本)を摂った30分後くらいに摂取するなど、調整してみましょう。
「自作プレワークアウト」はアリ?

既製品は高価なため、自分で成分を個別に購入し、混ぜ合わせて「自作」するトレーニーもいます。
メリット(コスト、成分調整)とデメリット(手間、味)
・メリット:圧倒的にコストを抑えられる。
自分に必要な成分だけを、好きな量で配合できる。
・デメリット:各成分を個別に購入・計量・混合する手間がかかる。
味が非常に悪い(特にシトルリンやβアラニン)。
成分の品質管理は自己責任。
基本的な組み合わせ例(カフェイン+シトルリン+βアラニン等)
自作する場合の基本的な組み合わせとしては、
・カフェイン(錠剤など):100〜200mg
・L-シトルリン:6〜8g
・β-アラニン:3〜5g
・クレアチンモノハイドレート:5g (別途毎日摂取が推奨)
などが考えられますが、各成分の特性とリスクを十分に理解した上で行う必要があります。
カフェイン量の罠にハマった夜
僕は、トレーニングのマンネリ打破のために、初めてプレワークアウトサプリ(海外製)を購入しました。
レビューでは「体感がすごい!」と絶賛の嵐。
期待に胸を膨らませ、トレーニング1時間前に推奨量の「1スクープ」を飲み干しました。
30分後、確かに体が熱くなり、謎のエネルギーが湧き上がってくる感覚が!
その日のトレーニングは絶好調。
いつもより重い重量が挙がり、セット数もこなせました。
「プレワークアウト、最高!」
しかし、問題は夜に起きました。
ベッドに入っても、目がギンギンに冴えて全く眠れない。
心臓も少しドキドキする。
結局、朝方までほとんど眠れませんでした。
後でその製品の成分表をよく確認すると、なんと1スクープあたり「カフェイン350mg」!
コーヒー約4杯分に相当する量でした。
カフェインにそれほど強くない僕には、明らかに過剰摂取だったのです。
僕は、効果の裏にあるリスクと、成分量をしっかり確認することの重要性を、痛い経験と共に学びました。
(今は、カフェイン150mg程度のものを選んでいます)
まとめ:プレワークアウトは「起爆剤」。頼りすぎず、賢く使おう

プレワークアウトサプリメントは、正しく使えば、あなたのトレーニングパフォーマンスを一時的に引き上げ、限界を超えるための強力な「起爆剤」となり得ます。
しかし、それはあくまで「補助」であり、「魔法の粉」ではありません。
最後に、プレワークアウトとの賢い付き合い方のポイントをまとめます。
- 目的を理解する:トレーニング「中」のパフォーマンスを高めるためのもの。
- 成分を知る:カフェイン、βアラニン、シトルリン等が主役。
効果と副作用を理解する。 - 必要性を見極める:初心者は不要。
停滞打破や、特別な集中力が欲しい時に。 - 安全第一:最初は「半量」から。
推奨量を超えない。
体調が悪い時は使わない。
健康に不安がある人は医師に相談。 - 選び方:目的に合った成分・含有量か?カフェイン量は?体感には個人差あり。
- 依存しない:常用を避け、休止期間も考慮する。
プレワークアウトは「日常」ではなく「非日常」のブーストとして、ここぞという場面で戦略的に活用する。
それが、副作用のリスクを最小限に抑え、その恩恵を最大限に享受するための、最も賢い使い方と言えるでしょう。




