「ヴィーガン(完全菜食)でも、ボディビルダーみたいな体になれるって本当…?」
「肉も魚も卵も食べずに、筋肉つけるためのタンパク質って、どうやって摂るの?絶対足りなくない?」
「健康のために植物性中心の食生活にしたいけど、筋トレの効果が落ちるのは嫌だなぁ…両立できる方法ってあるの?」
健康志向の高まりや、環境問題・倫理的な観点から、ヴィーガン(完全菜食主義)やベジタリアン(菜食主義)といった植物性ベースの食生活を選ぶ人が世界的に増えています。
しかし、こと「筋トレ」となると、「植物性の食事だけで本当に筋肉がつくのか?」という疑問や不安の声が、いまだに根強く存在します。
「筋肉=肉」というイメージがあまりにも強いため、「植物性=筋肉がつかない」と短絡的に結びつけてしまうのかもしれません。
結論から言えば、その考えは「嘘」であり、大きな誤解です。
正しい知識に基づいた計画的な食事戦略さえあれば、植物性ベースの食事でも、動物性食品を摂取するのと同等、あるいはそれ以上の筋肥大を達成することは十分に可能です。
世界トップレベルで活躍するヴィーガン・アスリートの存在が、何よりの証拠です。
この記事では、「植物性=筋肉がつかない」という誤解を解き、ヴィーガン・ベジタリアントレーニーが筋肥大を達成するための具体的な「食事戦略」を徹底解説します。
タンパク質の量と質の確保、不足しがちな栄養素への対策、そして実践的なメニュー例まで。
この記事でわかること
- なぜ植物性ベースの食事でも筋肥大が可能であるのか、その科学的根拠
- ヴィーガン・トレーニーがタンパク質の「量」と「質(アミノ酸)」を確保するための具体的な方法
- 植物性食で不足しがちな微量栄養素(ビタミンB12等)とその対策
「植物性=筋肉がつかない」は本当か?科学的な答え

なぜ「植物性でも筋肉はつく」と言い切れるのでしょうか?
それは、筋肉が作られるメカニズム(筋タンパク質合成)の鍵となる要素に基づいています。
① 筋タンパク質合成の鍵は「ロイシン」と「EAA総量」
筋肉の合成スイッチを入れる上で特に重要とされるのが、必須アミノ酸(EAA)の一種である「ロイシン」です。
そして、スイッチが入った後に筋肉を実際に作るためには、材料となる「必須アミノ酸(EAA)9種類全て」が十分に供給される必要があります。
重要なのは、これらの要素が「動物性由来」か「植物性由来」かということ自体ではなく、最終的に体内で必要な「アミノ酸」として供給されるかどうか、なのです。
② 植物性タンパク質でも「量」と「組み合わせ」でカバー可能
確かに、一般的に植物性タンパク質は、動物性タンパク質に比べて、単位重量あたりのロイシン含有量が少なかったり、一部の必須アミノ酸が不足していたりする場合があります(例:穀物はリジンが少ない)。
しかし、これは「摂取する総量を増やす」ことや、「複数の植物性タンパク質源を組み合わせる(例:米+大豆)」ことで、十分にカバー可能です。
植物性食品からでも、必要なロイシン量と、バランスの取れたEAAプロファイルを達成することは可能なのです。
③ 世界で活躍するヴィーガン・アスリートたちの存在
理論だけでなく、現実に目を向けてみましょう。
ボディビル、パワーリフティング、陸上競技、格闘技…
様々な分野で、ヴィーガン(完全菜食)でありながら、世界トップレベルのパフォーマンスを発揮しているアスリートは数多く存在します。
彼らの存在こそが、「植物性=筋肉がつかない」という説が誤りであることの、何より雄弁な証明と言えるでしょう。
ヴィーガン・トレーニー最大の課題:「タンパク質」の確保戦略

とはいえ、動物性食品を摂取する場合に比べて、ヴィーガン・トレーニーがタンパク質を確保するためには、より意識的な計画と工夫が必要になります。
① 目標摂取量を設定する(動物性より少し多めが良い?)
まず、1日に必要なタンパク質量を設定します。
一般的なトレーニー同様、「体重(kg) × 1.6g 〜 2.2g」が目安となります。
ただし、植物性タンパク質は一般的に動物性よりも消化吸収率がやや低いとされるため、目標範囲の中でもやや「多め」(例:体重×2.0g以上)を目指すのが、より確実かもしれません。
② 最強の植物性タンパク質源リスト(豆類、大豆製品、穀物、ナッツ・種子類)
ヴィーガン・トレーニーが頼るべき、主なタンパク質源です。
これらの食材を多様に組み合わせることが鍵となります。
【具体例】各食材のタンパク質量と特徴
・大豆製品:豆腐(木綿100gあたり約7g)、納豆(1パック約8g)、豆乳(200ml約7g)、厚揚げ、テンペ、枝豆など。
アミノ酸スコア100。
最も重要なたんぱく源。
・その他の豆類:レンズ豆(乾燥100gあたり約25g)、ひよこ豆(乾燥約20g)、キドニービーンズなど。
食物繊維も豊富。
・穀物:オートミール(100gあたり約13g)、玄米(100gあたり約7g)、全粒粉パン、キヌアなど。
主食からもタンパク質を意識。
・ナッツ類・種子類:アーモンド(100gあたり約20g)、ピーナッツバター、チアシード、ヘンプシードなど。
良質な脂質も摂れるが、カロリーに注意。
・その他:ブロッコリー、ほうれん草などの野菜にも少量含まれる。
セイタン(グルテンミート)なども高タンパク。
③ 「アミノ酸スコア」を理解し、「組み合わせ」で質を高める技術
前述の通り、大豆以外の植物性タンパク質は、単体ではアミノ酸スコアが100に満たない(特定の必須アミノ酸が少ない)場合があります。
例えば、米や小麦は「リジン」が不足しがちです。
しかし、リジンが豊富な「豆類(大豆など)」と一緒に食べることで、互いに不足するアミノ酸を補い合い、食事全体としてのアミノ酸バランス(質)を高めることができます。
これをアミノ酸の「補足効果」と呼びます。
様々な種類の植物性食品を「組み合わせる」意識が非常に重要です。
【重要】穀物(米・パン)+豆類=完璧なアミノ酸バランスへ
伝統的な「ご飯と味噌汁(大豆)」や「パンと豆のスープ」といった組み合わせは、実は栄養学的にも理にかなっているのです。
④ ヴィーガン・プロテインパウダーの賢い活用法(ソイ、ピー、ライス、ヘンプ)
食事だけで目標タンパク質量を達成するのが難しい場合、植物性のプロテインパウダーは非常に有効な補助となります。
・ソイプロテイン(大豆):アミノ酸スコア100。
吸収はややゆっくり。
・ピープロテイン(エンドウ豆):アミノ酸バランス良好。
アレルギーが少ない。
・ライスプロテイン(玄米):低アレルゲン。
単体だとリジンが少ないため、ピープロテインとブレンドされることが多い。
・ヘンププロテイン(麻の実):オメガ3・6脂肪酸や食物繊維も豊富。
複数の植物性プロテインがブレンドされた製品を選ぶと、よりバランスの取れたアミノ酸摂取が期待できます。
ヴィーガンになって、むしろ体が変わった
私は、倫理的な理由からヴィーガンになりました。
筋トレが趣味だったので、「もう筋肉は維持できなくなるかも…」と覚悟していました。
最初の頃は、知識不足からサラダばかり食べるような生活で、案の定、体重も筋力も落ちてしまいました。
しかし、「諦めたくない!」と思い、ヴィーガンと筋トレの両立について徹底的に調べました。
タンパク質源として大豆製品や豆類、ナッツを積極的に摂ること。
アミノ酸スコアを意識して「米+豆」などの組み合わせを心がけること。
そして、ソイ&ピーのブレンドプロテインを活用すること。
食事戦略を立て直し、実践していくうちに、驚くべきことが起こりました。
体重は健康的に戻り、以前よりもトレーニングの調子が良く、扱える重量も伸び始めたのです!
肌の調子も良くなり、体全体が軽くなった感覚。
計画的な植物性の食事が、私の体と心にポジティブな変化をもたらしてくれたのです。
「ヴィーガン=筋肉がつかない」は、完全に誤解でした。
見落とし厳禁!不足しがちな「微量栄養素」とその対策

植物性ベースの食事では、タンパク質以外にも、特に意識して摂取しないと不足しがちな「微量栄養素」があります。
これらが不足すると、健康を害するだけでなく、トレーニング効果も低下します。
① ビタミンB12:【最重要】サプリメントでの補給がほぼ必須
ビタミンB12は、神経機能や赤血球の生成に不可欠ですが、主に動物性食品に含まれており、植物性食品からはほとんど摂取できません。
(※海苔や一部の発酵食品に含まれるという情報もありますが、含有量や吸収率は不安定)
欠乏すると貧血や神経障害を引き起こすリスクがあるため、ヴィーガンの方は、ビタミンB12が強化された食品(シリアル、豆乳など)を利用するか、「サプリメント」での補給がほぼ必須と考えられています。
② 鉄(非ヘム鉄):吸収率を高める工夫(ビタミンCとの同時摂取)
植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」(豆類、緑黄色野菜など)は、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」に比べて、吸収率が低いという特徴があります。
そのため、ヴィーガン・ベジタリアンは鉄欠乏性貧血のリスクが高まります。
対策として、「ビタミンC」を多く含む食品(果物、野菜)と一緒に摂ることで、非ヘム鉄の吸収率を高めることができます。
(例:ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける)
③ 亜鉛:吸収を妨げるフィチン酸への対策(発酵・浸水)
亜鉛は、豆類や全粒穀物にも含まれますが、これらの食品に含まれる「フィチン酸」が亜鉛の吸収を妨げる可能性があります。
対策として、豆類を一晩水に浸けたり、発酵食品(納豆、テンペ)を利用したり、全粒粉パンを選ぶ際に発酵種(サワードウ)のものを選ぶことなどが、フィチン酸の影響を低減し、亜鉛の吸収を高めるのに役立ちます。
④ カルシウム:強化食品や緑黄色野菜からの摂取
乳製品を摂らないヴィーガンの場合、カルシウムの摂取源が限られます。
カルシウムが強化された豆乳やオレンジジュース、豆腐(凝固剤に注意)、そして緑黄色野菜(小松菜、ケール、ブロッコリーなど)、ごま、アーモンドなどを意識的に摂取する必要があります。
⑤ オメガ3脂肪酸(EPA/DHA):亜麻仁油、えごま油、藻類由来サプリ
抗炎症作用などを持つオメガ3脂肪酸のうち、特にEPAとDHAは主に魚油に含まれます。
植物性のα-リノレン酸(亜麻仁油、えごま油、チアシード、くるみなど)も体内で一部EPA/DHAに変換されますが、その効率は低いとされています。
α-リノレン酸の摂取を心がけると共に、必要であれば「藻類(アルジェ)」由来のEPA/DHAサプリメントを利用するのも有効な選択肢です。
⑥ クレアチン:体内合成されるが、サプリ摂取も有効
クレアチンは主に肉や魚に含まれますが、体内でも合成されます。
しかし、ヴィーガン・ベジタリアンは、肉食者に比べて筋肉内のクレアチン貯蔵量が低い傾向にあるという研究もあります。
パフォーマンス向上を目指すなら、ヴィーガン対応のクレアチンモノハイドレートサプリメントを摂取することは、有効な戦略となり得ます。
実践!ヴィーガン・トレーニーの1日の「食事メニュー」例(増量期/減量期)

これまでのポイントを踏まえた、具体的な食事メニューの例です。(※PFCは個人の目標に合わせて調整してください)
増量期の食事例:カロリーとタンパク質を確保する工夫
・朝食:オートミール(80g) + ソイプロテイン(30g) + バナナ1本 + アーモンドミルク + チアシード
・間食①:全粒粉パンのピーナッツバターサンド
・昼食:玄米(250g) + レンズ豆カレー(ひよこ豆・野菜たっぷり) + 豆腐サラダ
・間食②/トレ前:おにぎり2個 + 豆乳ヨーグルト
・トレ後:ソイ&ピープロテイン(40g) + 果物(オレンジなど)
・夕食:キヌア(150g) + テンペステーキ(200g) + 焼き野菜(ブロッコリー、パプリカ) + アボカド
・就寝前:ソイプロテイン(30g) or ナッツ少量
→ 穀物、豆類、ナッツ類を組み合わせ、食事回数を増やしてカロリーとタンパク質を確保。
減量期の食事例:低カロリーでも満足感を得る工夫
・朝食:豆腐スクランブルエッグ(豆腐+ターメリック等) + 全粒粉パン1枚 + アボカド少量
・昼食:サラダボウル(キヌア少量、ひよこ豆、ブロッコリー、葉物野菜、亜麻仁油ドレッシング) + ソイミート
・間食:ソイプロテイン(30g) + くるみ少量
・夕食:厚揚げと野菜の炒め物(きのこ、ピーマンなど) + 納豆
・就寝前:(空腹なら)温かい豆乳少量
→ 葉物野菜やきのこ類でかさ増しし、満足感を維持。
タンパク質源(豆腐、豆類、ソイプロテイン)はしっかり確保。
良質な脂質も忘れずに。
ヴィーガン筋トレで失敗しないための「注意点」

最後に、ヴィーガン・トレーニーが陥りやすい注意点です。
① 総摂取カロリー不足に陥らない(特に増量期)
植物性食品は、一般的に低カロリーで満腹感を得やすいものが多いため、増量期には意識して多くの量を食べる必要があります。
カロリー計算をしっかり行い、ナッツやオイルなどの脂質も活用して、目標カロリーを確実に達成しましょう。
② 「多様な」食材を組み合わせることを常に意識する
特定の食材(例:豆腐だけ)に偏らず、豆類、穀物、ナッツ、種子類、野菜、果物など、できるだけ多様な植物性食品を組み合わせること。
これが、アミノ酸バランスを整え、必要なビタミン・ミネラルを確保するための最も重要な戦略です。
③ 体の声を聞き、必要ならサプリメントも活用する
どんなに食事に気をつけていても、体調の変化(疲れやすい、力が出ないなど)には注意しましょう。
血液検査などで栄養状態を確認するのも良い方法です。
特にビタミンB12のように、食事だけでは摂取が困難な栄養素については、無理せずサプリメントを活用することも、健康維持のためには賢明な判断です。
④ 「ジャンク・ヴィーガン」にならない(加工食品の罠)
近年、ヴィーガン向けの加工食品(代替肉、菓子、インスタント食品など)が増えています。
これらは手軽ですが、塩分、油分、添加物が多く、栄養価が低いものも少なくありません。
「ヴィーガン=ヘルシー」とは限りません。
できるだけ自然に近い、未加工の食品(ホールフード)を中心に据えることが、健康的な体づくりの基本です。
B12不足でフラフラになった僕
僕は、ストイックなヴィーガン・トレーニーでした。
食事は自炊中心で、加工食品は避ける。
サプリメントも「自然じゃない」と敬遠していました。
最初の1年は体調も良く、トレーニングも順調でした。
しかし、2年目に入った頃から、原因不明の「だるさ」や「集中力の低下」を感じるようになりました。
トレーニング中にめまいがしたり、手足が痺れるような感覚も。
「貧血かな?」と思い、血液検査を受けたところ、重度の「ビタミンB12欠乏症」であることが判明したのです。
医師からは「ヴィーガンなら、B12はサプリで摂らないとダメだよ!神経障害が残る可能性もあるんだから!」と厳しく注意されました。
僕は、自分の無知と、「自然派」への固執が、健康を危険に晒していたことを知りました。
それ以来、僕はB12サプリメントを毎日欠かさず摂るようにしています。
自分の信条を貫くことと、健康に必要な知識を正しく得て実践することは、両立させなければならないのだと痛感しました。
まとめ:計画的な栄養戦略で、植物性でも筋肉は作れる!

ヴィーガンやベジタリアンといった植物性ベースの食事が、筋トレによる体づくりを妨げることはありません。
むしろ、計画的に行えば、健康面でのメリットも享受しながら、理想の体を十分に目指すことができます。
成功の鍵は、以下のポイントを押さえることです。
- タンパク質の量:目標摂取量(体重×1.6g〜)を確実に確保する(やや多めを意識)。
- タンパク質の質:多様な植物性食品(豆、穀物、ナッツ等)を「組み合わせ」、アミノ酸バランスを整える。
プロテインパウダーも活用。 - 微量栄養素:特に「ビタミンB12」はサプリメントでの補給を強く推奨。
鉄、亜鉛、カルシウム、オメガ3なども意識的に摂取。 - カロリー管理:増量期は特に「カロリー不足」に注意。
計画的にエネルギーを摂取する。 - 多様性とホールフード:加工食品に頼らず、自然に近い多様な食材を食べる。
「植物性だから」と限界を決める必要は全くありません。
正しい知識と計画的な栄養戦略があれば、あなたの食の選択と、理想の体づくりは、必ず両立できます。




