「ジムに通い始めた頃は順調に筋肉ついたのに、最近まったく変化がない…停滞期ってやつか…?」「ベンチプレスのMAX重量が、もう3ヶ月も更新できていない。どうすればもっと重いのが挙がるようになるんだ…」
「いつも同じ重量、同じ回数でトレーニングしてるけど、これじゃダメなのかな?具体的にどう負荷を上げてけばいいの?」
ジムでのトレーニングにも慣れ、扱える重量も増えてきた。
しかし、ある時点からピタリと成長が止まってしまう——それが多くのトレーニーを悩ませる「停滞期(プラトー)」です。
「頑張っているのに変わらない」という現実は、モチベーションを奪い、挫折へと繋がる最大の壁となります。
なぜ、あなたの体は成長を止めてしまったのでしょうか?
その答えは、筋トレにおける最も重要かつ普遍的な原則である「プログレッシブオーバーロード(漸進性過負荷)の原理」を、あなたが実践できていないことにあります。
この記事では、なぜ停滞期が訪れるのか、そのメカニズムと、停滞を打ち破り「永続的な成長」を手に入れるための絶対法則「プログレッシブオーバーロード」とは何か、そしてそれをあなたのトレーニングに落とし込むための「5つの具体的な方法」を徹底的に解説します。
この記事でわかること
- なぜ筋トレで「停滞期」が訪れるのか、その科学的な理由
- 筋肉を成長させ続けるための絶対原則「プログレッシブオーバーロード」とは何か
- トレーニング負荷(重量・回数・セット数など)を増やしていく5つの具体的な方法
なぜ「同じ重さ・回数」では筋肉は成長しないのか?

「継続は力なり」と言いますが、筋トレにおいては「ただ同じことを継続」しているだけでは、残念ながら力(筋肉)はつきません。
むしろ、停滞を招く原因となります。
その理由は、人間の体が持つ驚くべき能力にあります。
① 筋肉が刺激に「適応」するメカニズム
人間の体は、外部からのストレス(刺激)に対して「適応」する能力を持っています。
あなたが初めてベンチプレス50kgを挙げた時、体はそのストレスに対して「もっと強くならなければ!」と反応し、筋肉を成長させます。
しかし、あなたが毎回「同じ50kg」でトレーニングを続けていると、体はその負荷に慣れてしまい、「もうこれ以上、成長する必要はないな」と判断します。
つまり、同じ刺激(負荷)は、筋肉にとって「ストレス」ではなく「日常」になってしまうのです。
これが停滞期の正体です。
② 成長の鍵「プログレッシブオーバーロード(漸進性過負荷)の原理」とは?
この体の「適応」に対抗し、成長し続けるための唯一の方法。
それが「プログレッシブオーバーロード(Progressive Overload)」、日本語で「漸進性過負荷(ぜんしんせいかふか)の原理」です。
これは、「筋肉を成長させ続けるためには、常に以前よりも『少しだけ強い』負荷(Overload)を、段階的(Progressive / 漸進的)に与え続けなければならない」という、筋トレにおける絶対法則です。
「昨日より今日、今日より明日」と、常に筋肉に新しい「挑戦」を与え続けることが、停滞を打ち破る唯一の鍵なのです。
【最重要】オーバーロードを達成する「5つの具体的な方法」

「負荷を増やし続ける」と言っても、具体的にどうすればいいのでしょうか?
プログレッシブオーバーロードを達成するには、主に5つの方法があります。
あなたは、これらのうち少なくとも1つを、毎回のトレーニングで達成することを目指します。
① 使用重量(ウェイト)を増やす(最も王道)
最もシンプルで、最も効果的な方法です。
前回ベンチプレスを「50kgで10回」できたなら、次回は「52.5kgで8回」を目指す。
あるいは「50kgで11回」を目指す、というように、扱う「重量」そのものを増やしていく方法です。
筋力向上と筋肥大に、最も直接的に繋がります。
② レップ数(回数)を増やす
同じ重量のまま、「回数(レップ数)」を増やす方法です。
前回「50kgで10回」できたなら、次回は「50kgで11回」を目指す。
1回でも多く挙げることで、筋肉にかかる総負荷量は増大します。
特に、重量を刻みにくいダンベル種目などで有効な方法です。
③ セット数を増やす
同じ重量、同じ回数のまま、「セット数」を増やす方法です。
前回「50kg × 10回 × 3セット」だったなら、次回は「50kg × 10回 × 4セット」にする。
これにより、その部位に対する「トレーニングボリューム(総負荷量)」が増加し、新たな成長の刺激となります。
④ トレーニング頻度を増やす(※注意点あり)
特定の部位を鍛える「頻度」を増やす方法です。
前回「胸トレを週1回」行っていたなら、次回は「胸トレを週2回」にする(例:分割法を変更するなど)。
ただし、回復が追いつかない「オーバートレーニング」に陥るリスクが最も高い方法でもあります。
初心者が安易に頻度だけを増やすのは危険です。
⑤ 休憩時間(インターバル)を短くする
同じ重量・回数・セット数でも、セット間の「休憩時間(インターバル)」を短くする方法です。
前回「インターバル90秒」だったなら、次回は「インターバル60秒」にする。
これにより、筋肉が回復しきる前に次のセットを行うことになり、トレーニングの「密度(強度)」が高まります。
心肺機能への負荷も高くなるため、注意が必要です。
初心者〜中級者がまず集中すべきは「重量」と「回数」

5つの方法を紹介しましたが、初心者を卒業し、中級者を目指すあなたが最も集中すべきは、①の「重量」と②の「回数」を伸ばしていくことです。
そのための、非常にシンプルで強力なフレームワークがあります。
「ダブルプログレッション」という最強のフレームワーク
これは、「回数」と「重量」という2つの要素(ダブル)で、段階的(プログレッション)に負荷を上げていく方法です。
・ステップ1:目標回数範囲を決める。
(例:筋肥大目的なら「8回〜12回」)
・ステップ2:ある重量で、目標回数範囲の「上限」(例:12回)をクリアできたら、次回「重量」を上げる。
・ステップ3:重量を上げると、回数は目標範囲の「下限」(例:8回)に落ちる。
・ステップ4:その新しい重量で、再び目標回数範囲の「上限」(12回)を目指して「回数」を増やしていく。
・ステップ5:上限(12回)をクリアできたら、再び「重量」を上げる…。
このように、「回数を伸ばす」→「重量を上げる」→「回数を伸ばす」…というサイクルを繰り返すことで、あなたは半永久的に成長し続けることができるのです。
具体例:ベンチプレスで重量を伸ばしていくステップ
目標回数範囲を「8回〜12回」と設定した場合。
・Week 1:50kg × 8回(下限クリア)
・Week 2:50kg × 10回
・Week 3:50kg × 12回(上限クリア!→次回、重量UP)
・Week 4:52.5kg × 8回(下限クリア)
・Week 5:52.5kg × 9回
・Week 6:52.5kg × 11回
・Week 7:52.5kg × 12回(上限クリア!→次回、重量UP)
・Week 8:55kg × 8回…
このように、常に「回数」または「重量」のどちらかで、前回を上回ることを目指します。
「メモ」が僕の停滞期を終わらせた
僕は、ジムに通って半年。
最初の頃は順調にベンチプレスの重量が伸びましたが、60kgあたりでピタリと停滞してしまいました。
「なんでだろう…」。
悩んでいた僕に、ジムの先輩が「トレーニングノート、つけてる?」と尋ねました。
「いえ、なんとなく感覚でやってます」。
すると彼は、「それじゃダメだ。
前回何キロを何回やったか記録しないと、次回それを超えようという目標が生まれないだろ?」と言いました。
僕はその日から、スマホのメモ帳に「日付・種目・重量・回数・セット数」を記録し始めました。
そして、毎回トレーニング前に、前回の記録を確認する。
「前回は60kgを8回か…。今日は9回目指そう」。
目標が明確になったことで、不思議と力が湧いてきました。
そしてその日、僕は初めて60kgを9回挙げることができたのです。
「記録」という行為が、僕の「感覚」頼りのトレーニングを、「目標達成」のゲームに変えてくれました。
停滞の原因は、僕の記憶力の曖昧さにあったのです。
停滞期(プラトー)を打ち破るための「オーバーロード応用テクニック」

ダブルプログレッションを実践しても、どうしても重量や回数が伸び悩む「本当の停滞期」が訪れることがあります。
そんな時に試すべき、応用テクニックです。
停滞の原因を探る(フォーム、栄養、休養)
まず、トレーニング内容以外の部分に原因がないかを探りましょう。
・フォーム:いつの間にかフォームが崩れ、対象筋に効かせられていない?
・栄養:体重を増やすべきなのに、カロリーやタンパク質が足りていない?
・休養:睡眠不足やオーバートレーニングで、回復が追いついていない?
多くの場合、停滞の原因はトレーニングそのものより、これらの「基本」がおろそかになっていることにあります。
ドロップセット法 / レストポーズ法(一時的な刺激変化)
筋肉がマンネリ化した刺激に慣れてしまった場合、一時的に「いつもと違う強烈な刺激」を与えることで、停滞を打破できることがあります。
・ドロップセット法:限界まで反復した後、すぐに重量を下げて、さらに限界まで反復する。
・レストポーズ法:限界まで反復した後、10〜15秒だけ休み、同じ重量でさらに数回反復する。
これらは筋肉を極限まで追い込むテクニックですが、頻繁に行うとオーバートレーニングになるため、停滞打破の「起爆剤」として一時的に導入しましょう。
意図的な「ディロード(負荷軽減)」期間を設ける
意外かもしれませんが、「あえて休む」ことも停滞打破に繋がります。
長期間ハードなトレーニングを続けていると、筋肉だけでなく、神経系にも疲労が蓄積します。
「ディロード」とは、1週間程度、意図的にトレーニングの強度(重量やセット数)を大幅に下げる、または完全に休む期間のこと。
これにより、蓄積した疲労がリセットされ、体がフレッシュな状態に戻り、ディロード明けに再び成長が始まることがあります。
オーバーロードを「記録」する重要性

プログレッシブオーバーロードを確実に実践するために、絶対に欠かせないことがあります。
それは「記録」です。
トレーニングノート(アプリ)が必須な理由
人間の記憶は驚くほど曖昧です。
「前回、何キロで何回やったっけ…?」が不明確なままでは、「前回を超える」というオーバーロードの原則を実践できません。
トレーニングノート(紙でもスマホアプリでもOK)を用意し、「日付」「種目名」「重量」「回数」「セット数」を必ず記録する習慣をつけましょう。
これが、あなたの成長を可視化し、次の目標を設定するための「航海日誌」となります。
「感覚」ではなく「数字」で成長を追う
「今日はなんか調子がいいから重くしてみよう」といった「感覚」に頼ったトレーニングは、再現性がなく、停滞を招きます。
記録に基づいた「数字」で、「前回8回だったから、今日は9回」「前回12回クリアしたから、今日は2.5kg増やす」というように、客観的なデータに基づいて負荷を設定する。
これが、科学的に成長し続けるための鍵です。
「5kgの壁」を越えさせてくれたディロード
僕は、ベンチプレス100kgの壁に、半年以上も跳ね返され続けていました。
95kgは挙がるのに、どうしても100kgが挙がらない。
セット数を増やしたり、ドロップセットをやったり、あらゆることを試しましたが、状況は変わりませんでした。
「もう限界なのか…」。
諦めかけた時、トレーナーから「1週間、完全にトレーニングを休んでみませんか?」と提案されました。
「休む?今休んだら、もっと弱くなりますよ!」
僕は抵抗しましたが、「神経の疲労が抜けていない可能性があります。
騙されたと思って」と言われ、渋々1週間の「ディロード(完全休養)」を取ることに。
最初の数日は不安でしたが、後半は体が軽くなっていくのを感じました。
そして1週間後、恐る恐るジムで95kgに挑戦すると…驚くほど軽く感じました。
「これならいけるかもしれない」。
そして、ついに100kgに挑戦。
息を吸い込み、バーを下ろし、全力で押し上げる——挙がった!
半年間越えられなかった壁を、僕は「休む」ことで越えることができたのです。
攻めるだけでなく、時には戦略的に「引く」ことの重要性を学びました。
まとめ:「昨日より一歩でも前へ」が、あなたを変える

停滞期は、あなたが成長の次のステージに進むための「サイン」です。
それは、「今の負荷は、もうあなたにとって挑戦ではないですよ」という体からのメッセージ。
そのメッセージに応える唯一の方法が、「プログレッシブオーバーロード」なのです。
最後に、成長し続けるための鉄則をまとめます。
- 筋肉は「適応」する。
同じ刺激では成長しない。 - 常に「昨日より少しだけ強い負荷」を与える(オーバーロード)。
- 具体的には、「重量」または「回数」を伸ばす(ダブルプログレッション)。
- 全てのトレーニングを「記録」し、「数字」で成長を追う。
- 停滞したら、「栄養・休養」を見直し、時には「ディロード」も検討する。
「前回よりも、たとえ0.5kgでも重く、たとえ1回でも多く挙げる」——この地道な積み重ねこそが、あなたの体を確実に変えていきます。
プログレッシブオーバーロードの原則を胸に刻み、今日の限界を明日の普通に変えていきましょう。




